「こいつは俺が連れて行くことになった」

チーグルの棲家に戻って報告。

ミュウは俺の肩から降りて、長老の下まで走った。

「長老、僕は行くですの!ご主人様と一緒に行くですの!」

「ミュウ、どういうことじゃ」

長老とミュウが話している。

まだ大樹に残っていたアッシュ、じゃなくてルークたちは、やはり怪訝そうな顔を俺に向けた。

「あなた、ミュウとどういう関係なの?」

「まあ、色々と」

一応主従ではある。

そこに至るまでの経緯を言えないから、濁した。

「アッシュ、あなたは僕を連れ戻しに来たわけではないんですか?」

これはイオンだ。

うん、俺が六神将として命を受けていたなら、そうだったんだけど。

「今はまだ、何も命を受けていません。私はアリエッタの家族を助けに来ただけです」

横から、ジェイドの視線を感じる。

口を開いても怖いけど、無言でも怖い。

何とか目をそらさないように、自分を奮い立たせる。

すると、報告と許可申請を終えたのか、ミュウが戻ってきた。

「長老は、なんて?」

「二つ、ソーサラーリングがあったのは、このためかもしれぬ。連れて行くがいい」

ミュウが口を開く前に、長老がそう言った。

あれ?

ソーサラーリングが、二つ?

本当だ。

ミュウの腹と、長老が持っているので、二つある。

なんでだ?

……とりあえず、後で考えよう。

「ありがとうございます、長老。ミュウは、必ず私が守ります」

ぺこりと礼をする。

戻ってきたミュウを肩に乗せて、大樹を出た。

「それでは、失礼します」

何か、色々と声が聞こえたが、心の中で謝りながら無視した。

だって、深く突っ込まれたらごまかせる自信がないからな。

とにかく、ごめん、みんな。


ライガクイーンの元に戻るまでに、伝えるべきことは伝えておく。

俺が今望んでいること、協力してくれる人たち、これから何をするか。

半分くらいは分かってないかもしれないが、まあいいだろう。

「アッシュ!」

そろそろ姿が見えるか、という頃に、アリエッタが飛びついてきた。

何とかそれを受け止めて、頭を撫でてやる。

「ただいま、アリエッタ」

「アッシュ、お帰り、です!」

「アリエッタさん、こんにちわ、ですの!」

「……え?」

頭から聞こえた声に、アリエッタが怪訝そうに顔を上げた。

俺の肩にいるミュウをまじまじと凝視する。

「アッシュ、どうして、ママの森を燃やしたチーグルがいるの?」

「連れて行くことになった。落ち着け、アリエッタ」

言うや否や叫びそうになったアリエッタを落ち着かせて、ライガクイーンの元へ行く。

当然、ライガクイーンもミュウに向かって吼えた。

「すみません、ライガクイーン。この者は、償いのため、私に同行することになりました。

すぐに森を出るゆえ、どうか今しばしお待ち下さい」

出来る限り丁寧に、謝罪をする。

特に返事は返ってこなかったが、多分肯定だろう。

移動の交渉も終えてあるし、そろそろ。

「アリエッタ、そろそろ任務が入るはずだ。行こう」

「あ、はい、です。ママ、またね」

アリエッタが手を振ると、ライガクイーンは優しい鳴き声でそれに応えた。

うん、やっぱりライガクイーンって、母性本能が強いんだな。

この後タルタロスを、イオンを狙って襲うように命令が入るはずだよな。

あの時、艦にはアッシュとアリエッタとリグレットとラルゴがいたはずだから……

多分、俺たちにも命が出る。

急がないとな。

「アッシュ、どこに向かうですか」

「んー、そうだな……とりあえず、南。どこかでリグレットたちと合流できると思うんだけど……」

「分かったです」

フォンに乗って、ルグニカ平野を駆ける。

結構気持ちいい。

しばらくすると、空から聞きなれた鳴き声が聞こえた。

「フォンお兄ちゃん、止まって」

アリエッタもそれが分かったから、フォンを止まらせた。

急ブレーキがかかって、動きが止まる。

すぐに、空からフラーメがやってきた。

「早かったな、フラーメ」

手紙を受け取りながらねぎらっていると、道具袋からミュウが顔を出した。

「ご主人様、誰ですの?」

途端、フラーメが目を険しくした。

なんだ?

何が気に入らなかったんだ?

まあ、とりあえず紹介しとかないと。

「フラーメ、こいつはミュウ。チーグルだ。これから同行することになったから、仲良くな。

ミュウ、こいつはフラーメで、とても賢くて気の利くいい奴だ。お前も、仲良くな」

「はいですの!よろしくですの、フラーメさん!」

ミュウは勢いよく返事をしたが、フラーメは何やらミュウを睨みつけている。

「みゅうぅぅぅぅ」

ミュウがしょんぼりとした。

……魔物の縄張り意識みたいなもんなのかな。

ま、その内打ち解けるだろ。

とと、手紙、手紙。

セプからだ。

「アッシュ、お手紙、何て書いてあるですか」

「待ってろ、えーと……。


アッシュへ


いきなりいなくならないでよ!

……心配したんだからね。

戻ったら小言たっぷり降らせるつもりだから、そのつもりで。

それと、六神将に任務が入ったよ。

モースから。

何やら、七番目が行方不明になって、今、マルクト軍に捕われているから助けて来いって。

今、そっちはチーグルの森だろ?

ちょうど奴らもその辺にいるらしいから……セントビナー近くで襲撃にかけるみたい。

僕と死神はセントビナーで待機だけど、アッシュとアリエッタは至急、戻って作戦に参加するようにだってさ。

とりあえず、急いでセントビナーまで来てね。


サスセプト


……だ、そうだ」

予想通りだ。

やはり、タルタロスの襲撃に入る。

一難終えてまた一難。

また、忙しくなるな。

「アッシュ、セントビナー、行くですか?」

「ああ、頼むよ」

言うと、アリエッタはフォンに指示を出して、フォンは再び走りだした。

フラーメも、ネアと一緒に飛んで付いてくる。

ミュウは吹き飛ばされかねないから、また道具袋に突っ込んだ。

ライガクイーンを助けることには、成功した。


次なる難関は、タルタロスの乗員を助けることだ。


すくえる、零れ落ちない
(出来るだけ、多くの人々を)