セントビナーに着くと、既に他の六神将たちが揃っていた。

早い。

「アッシュ、勝手に動くな」

「ごめん。アリエッタの母上が危篤だと聞いて、思わず」

当たり前だけど、リグレットに怒られた。

勝手にダアト抜け出したから……。

でも、それはママのためだ。

アッシュが怒られることはない。

「アッシュ、ママ、助けてくれた。リグレット、怒らないで」

だからそういったのだが、アッシュは苦笑するだけだった。

「大まかなことは聞いている。それで、どうすればいい?」

アッシュが尋ねると、シンクが答えた。

「アリエッタの魔物で強襲をかける。兵士も一緒に落とそう。

それで、導師イオンを探し出し、連れ戻す」

「邪魔するものがいた場合は?」

「殺せ」

そう言ったのはリグレットだ。

迷いも何もないその声に、少しびくりと震える。

ぎゅ、とアッシュの服のすそを掴んだ。

すると、アッシュが優しく頭を撫でてくれた。

「決行時刻は」

「すぐだ。アリエッタ、行けるな」

「う、うん。大丈夫」

頷いて、ネアに、魔物たちを集めるように頼む。

空を飛べる、馬力のあるものと、アッシュが補足した。

「じゃあ、僕は出入り口を見張っているから」

「ああ、決して見逃すなよ、シンク」

「分かってる」

シンクとディストはセントビナーに残る。

任務に行く直前に、アッシュはこっそりシンクに手紙を渡していた。

フォンの上で書いていたものだ。

「頼んだ」

「了解」

セプがそれを受け取って、小声で短く会話をした後、アッシュが戻ってきた。

「行こう、アリエッタ」

「はい」


タルタロスっていう、マルクトの軍艦が来るまで、空中で待機していた。

アッシュは、すぐ隣にいる。

「アリエッタ、いいか?魔物たちには、なるべく人を殺さないように頼んでおいてくれ。

気絶させる程度だ。それから、次々、落とすと見せかけて外に降ろすように。出来るか?」

「……やってみるです」

「頼むよ、アリエッタ」

アッシュの目は真剣だ。

アッシュは、タルタロスの乗員たちを助けたいって言ってた。

このままだと、神託の盾兵たちに殺されてしまう。

船の上にいると、いつ殺されるか分からない。

だから、こっそりと外に降ろすことにした。

タルタロス付近に、他にこっそりとお友達を置いて、魔物に襲われないようにして。

ずっと前から、助けるためにはどうすればいいか考えてたって、言ってた。

これは、きっとあの時アッシュが言っていた、“やりたいこと”の一つだ。

六神将になったとき教えてくれたことだ。

やりたいことがあるから、ダアトに戻ってきたんだって。

アリエッタは、それを助けたい。

イオン様は、アリエッタに生きてって言ってた。

アリエッタは、アッシュの隣で生きたい。

アッシュが大好きだ。

大事な大事な家族だ。

フォンお兄ちゃんたちとはまた違う、大切な家族だ。

アッシュが望むなら。

自分に出来ることなら。

何だって、手伝いたいと思う。

アッシュに笑っていて欲しいから。

アッシュと一緒にいたいから。

そのためなら、何だってしたいから。

そろそろと、アッシュに手を伸ばす。

すると、アッシュは笑って、この手を握り返してくれた。

温かい。

そう。


この温かさを、ずっと感じていたいから。


大切で大事で大好きな人
(何ものにも代えがたい、絶対的な)