三話


とりあえずの方針を決めた次の日、四人は全員で図書館にこもっていた。

人数は多いほうがいい。

譜業、譜術など細かい理論が必要なものをシカマルが担当。

この世界の料理など、家事全般をいのとヒナタが担当。

ナルトはこの世界の細かい歴史を担当していた。

「ヒナ、シカ、いの」

昼過ぎごろ、ナルトの呼びかけが聞こえて三人は顔を上げた。

「ちょっといい話を聞いた」

「何?」

「この教会、もう少し奥まったところに、もう一つ図書室があるらしい。ここでは分からない、詳しいことが載った本があるらしいんだ」

それに三人が軽く目を見開いた。

「どこで聞いたの?」

「その辺りを歩いていた人たちのひそひそ話」

本当なら聞こえない距離での聞こえない声量。

だが忍、特に周りの物音に関して敏感なナルトには筒抜けだった。

「許可がなければ入れないらしい。大体の場所は聞いた。瞬身で飛んで、変化してもぐりこむぞ」

ナルトがいい終わる前に、三人とも読んでいた本を元の棚に戻しに行っていた。

小さく、本は大切にな、と声をかけてから、ナルトも自分の本を仕舞いに行った。


瞬身で飛んだ先には、上層にあった図書室よりもはるかに広く、古びた図書室。

「古い書物が多そうだな」

「慎重に読まないとね」

「……ざっと見たが、なるほど珍しい本が多そうだ。特にナルの担当分野は相当面白いことになると思うぜ」

ぐるっと一周してきたらしいシカマルが、にやりと笑いながらそういった。

ナルトの担当は歴史。

つまり、隠された、抹消された歴史が、あるということだ。

「読むか。気配には気をつけろよ」

当然とばかりに頷いて、再び四人は散った。

途中何回か人がやってきたが、いのが幻術をかけてやりすごした。

そろそろ出るか、という時間の頃に、ヒナタが声を上げた。

「どうした」

「ナル、ここ、隠し扉があるわ」

白眼で壁の奥を見たらしい。

変な模様(シカマル曰く、譜陣というらしい)が光を放っているらしい。

「どうする?行ってみるか?」

「いや、隠されているものには防犯装置の可能性がある。今はことを荒げたくない。だから、シカ、頼む」

「あいよ」

シカマルは印を組んで影を隙間からもぐりこませた。

とりあえず、防犯装置の類は発動しない。

そこにある譜陣を確認して、シカマルがやや顔を顰めた。

「何か分かったか」

「ああ、この譜陣の書き方……近くのザレッホ火山とやらに繋がってるぜ」

「何で、そんなところに?」

隠し通路を作ってまで、教会と繋げる理由が分からない。

「今度、鍛錬も兼ねて火山側から行ってみよう。何かあるかもしれない」

「了解」

シカマルは影を戻し、術を解いた。


地下の図書館の知識もそろそろ食い尽くしたころ、四人は火山に向かった。

暑さはナルトの水遁と風遁でしのいでいる。

「ナルがいなかったら死ぬわね、ここ」

「少なくとも感覚が鈍りそうだな」

「イコール、死ね」

魔物は全く苦にならなかった。

むしろ元の世界の忍の方がよっぽど強かった。

「そういえばナル、ローレライとやらはどうなったの?」

「最初に通信してきて以来、ぱったりだな。九奈が相当腹を立ててたが」

ナルトの身の内の所有権を強引に奪われ、九奈は大変怒っていた。

次来た時には滅多打ちにしてやると、息まくくらいには。

「勝手に呼び出して放置かよ。ったく、めんどくせー」

片手間に魔物を倒しながらシカマルが頭を掻く。

そろそろ、ナルトたちとの実力差に気づいたのか、魔物はなりを潜め始めていた。

「あ、なんか広いところに出そうよ、ナル」

白眼で辺りを見ていたヒナタが声をあげた。

どうやら行き止まりらしいそこで、四人は立ち止まる。

そこに、教会と似たような譜陣を見つけ、シカマルは覗き込んだ。

「どうだ?」

「ビンゴ。これ、あの隠し部屋に繋がってる。あれの行き先はここだ」

シカマルはにやりと笑って顔を起こした。

やや広くなっているそこには、巨大な岩がある。

「採掘場が、何か?」

「なら隠し部屋にする必要ないだろ」

そう言って白眼で細かくチェックをしているヒナタを見る。

ヒナタの視線が、ある一点で止まった。

「ナル、そこ、土の結構奥深く。何か……箱の中に紙、かな、読む?」

「いや、いい。出す。ちょっと下がってろ」

三人を下がらせ、ナルトは土遁で穴を掘った。

あっという間にその穴は深いところに到達する。

少しして、跳ねるように箱が飛び出してきた。

ナルトは何も無かったかのように土を元に戻す。

「何が書いてあるの?」

ナルトが取り出した紙に、三人が覗き込んだ。

その、一番上には。


“導師イオン、ここに記すことに偽りはないと、導師の名において誓う”