N×D小話1


1.立ち入り禁止


「アレン君、例の彼らを呼んできてくれるかい?任務なんだ」

「分かりました」

上司に当たるコムイに頼まれて、アレンは最近何だかんだの経緯で教団に入った、

四人の子供たちを呼ぶべく、彼らがいるはずの部屋に向かった。

そこは、研究室の一部屋。

彼らがこの世界の科学を研究したいとのことで、それなりに機材の揃っている部屋を一つ与えたのだ。

コンコン。

アレンは普通にノックしてみた。

返事が無い。

「すいません、ええと、ナルト君たち、いますか?」

呼びかけてみた。

やはり返事が無い。

「だーれーかーいーまーせーんーかーっ!!」

今度は叫んでみた。

それでも返事が無い。

いっそドアを叩き壊してやろうかとアレンが左手に力を込めたとき、不意に後ろから声がかかった。

「アレン、か?」

「! ナルト君!」

アレンが振り向けば、そこには探していた子供たちの一人が立っていた。

眠そうだ。

「寝ていたんですか?」

ナルトはアレンの後ろの方からやってきた。

寝室として与えられた部屋の方で、眠っていたようだ。

「ああ。結界に反応があるから来てみれば……何だ?」

「コムイさんから、呼んでくるように頼まれまして。任務です」

「分かった。悪いな、結界張ってて、外の物音が聞こえないようにしてるんだ」

「はあ」

子供たちは、アレンたちからすれば驚きの、便利だったり危険だったりする技を多様する。

生返事で頷きながら、アレンはナルトが他の面々を呼んでくれるのを待った。

見た目上は何もしなかったが(しかし彼らは不思議な術を以下略)、やがて扉が内側から開いた。

「おはよ、ナル」

「おはよう。成果はどうだ?」

「んー、まずまず。後で細かく報告するね」

扉からぞろぞろと他の三人の子供たちが出てくる。

中で何をやってるんだろうと、アレンは覗き込もうとして。

笑顔で、子供の一人、ヒナタに制された。

「覗かない方がいいよ?多分、気持ち悪くなるから」

「……はあ」

扉がゆっくりと閉められる。

中は、見えない。

気持ち悪くなる、とは何だ。

一体中で何をやっているんだ。

言葉にはしなかったものの、顔に出ていたらしい。

子供の一人、シカマルがため息をついて肩を叩いた。

(シカマルの方が身長が低いため、手を上に伸ばす形だが)

「世の中には、知らない方がいいことがたくさんあるんだぜ、うん」

そのまま、いのと共に司令室へと歩いていった。

「ご飯、食べる気失くすのはいやでしょ?」

それから、相変わらず笑顔でヒナタが言って、そしてナルトと一緒に歩いていった。

アレンはしばらくぼうっと立っていて。

「……忘れよう」

そう呟いて、急いで四人を追いかけた。


2.人外


零班+アレン+ラビで任務に出ていた。

イノセンスがあるかもしれないという廃墟で、大量のアクマと戦った後だった。

ファインダー部隊は既に前線から退いていて、今はエクソシスト組だけで捜索に当たっている。

夜ということで、休憩することになった。

ナルトが時空間忍術でその場所を隠し、火遁で火をつける。

ヒナタたちが持ってきた食材で調理を始めた。

「まさか野外でご飯が食べられるとは思ってなかったさー」

「全くです。ありがとうございます、ナルト君たち」

大人しく座っていて欲しいといわれ、アレンとラビは火を囲って茶をすすっていた。

ちなみに緑茶だが、二人には好評だった。

日本食と合うんだといえば、二人は同時に某刀使いを連想したのか、微妙そうな顔をした。

「色々、手慣れていますね」

アレンは、てきぱきと準備を続けるヒナタたちを見やる。

「俺たちは任務上、森や谷で野宿することが多くてな。こういうのはお手の物だ」

「まあ料理はあいつら担当だけど」

ナルトとシカマルも一緒に緑茶をすする。

ナルトはたまに火の調節をした。

「そういえば、食材やら野宿セットやら、どこに持ってたんさ?特に入れ物があるようには思えねえけど?」

ラビがきょろきょろと見回す。

ナルトは茶をすすって一言。

「術」

ナルトたちは、忍術をそう説明していた。

これは、黒の教団では摩訶不思議謎の術という通り名で呼ばれている。

しばらく、たっぷり間を空けて、アレンは口を開いた。

「……へえ。火をおこしたのもですよね。あと、何が出来るんですか?」

アレンは半分逃避、半分興味本位でそう尋ねた。

ナルトは、少し考えるようにした後、閃いたように微笑んで。

「色々。たとえば、今ここから半径十キロ程度の範囲にいるアクマを一掃することぐらいはたやすい」

その瞬間、あちこちで爆発が起きた。

連続的に、かなり大きい爆発が。

「……」

二人はそのまま固まった。

「ご飯できたわ。ナル、シカ、手伝って。ついでにさっきのアクマ回収してきて」

「ん」

「了解」

ついでって何だ、ついでって。

二人の心境は一致した。

人類を滅ぼしかねない力を持った奴らの死骸の回収作業が。

まるで買い物にでも行って来てと言わんばかりの軽さ。

しかもご飯の準備と同列。

てきぱきとご飯が盛り付けられていくのを見ながら、ラビは茶をすすった。

「……アレン、俺、こいつら怖いさ」

「……慣れましょう」

色々と。

アレンは若干遠い目をして笑った。


ヒナタといののご飯はたいそう美味しかった。