拾った責任もあることだし、とりあえず万事屋においておくことになった。

くそ、また食費その他が増える。

こんなガキに働かせるのも、気が引けるしな。

癪だったが、一応警察である真選組に、迷子届けを出しておいた。

保護者らしき人物の届けがあったら教えてくれと言っておいたが、あの子供の様子からすると、限りなく望みは薄いと思う。

子供のために小さい服を買ってから、子供たちが待つ家へと帰った。


「で、何やってんだ、てめーら」

買い物袋片手に呆れる。

子供たち、さらにプラスウチの大型犬は、だんごのように丸く固まっていた。

「いえ、定春とじゃれあっているうちに、なんだかこんなことに……」

新八に大小の傷が見え隠れする。

じゃれあっているうちに、攻撃されたな。

定春にとってはじゃれつきでも、一般人の人間にとっては攻撃だ。

それをじゃれつきの範囲とできるのは、神楽ぐらいだ。

と、一緒にいる子供を見れば。

定春の毛に埋もれてすやすやと寝ている。

どうやら怪我は無いらしい。

「銀ちゃん、この子すばしっこいアルよ。ちょこまかと動いて、定春と遊んでくれたアル」

「いや、あれは定春から必死に逃げてたんじゃないのかな……」

おそらく新八の方が正しい。

しかし、逃げようとして逃げられるのは確かにすごい。

普通は、逃げようとしても、逃げられない。

脚力的に。

この子供は実は夜兎ではないだろうか?

もしくはそれと同等の力を持つ戦闘種族。

そうだとすれば、まだあの寝言に納得がいかなくもないが……。

分からないことを考えても仕方ない。

とりあえず、今出来ることをしなければ。


「「呼び名?」」

二人が同時に首をかしげた。

それに大きく頷く。

「ああ。やっぱないと不便だろ」

「でも、それって僕らが勝手に決めていいんですか?」

「本当に名前が無い、もしくは名乗りたくなかったんだ。なら、こっちでつけても多分文句は言わねーだろ」

そういうと、二人は納得したのかうんうんと名前を考え始めた。

「定春三十五号とか!」

「ややこしいから、いや、その前にあの子ペットじゃないから。

神楽ちゃん、ペットにはみんな定春って名前付けてるでしょ。ていうかいつの間にそんな数になったの」

昔、定春という名前の兎を買っていたらしい。

自分で潰してしまったらしいが。

この前、虫相撲の騒ぎがあった時にも、捕まえた虫に次々に定春と名前をつけていた。

安直にもほどがある。

本人曰く、何号かは増えていくらしいが。

次々と二人で案を出していく。

互いに却下しあっているが。

これじゃあ、いつまで経っても決まらないんじゃないか。

「難しいですね……銀さんは?何かありませんか?」

話を振られて、考えてみる。

名前。

個人その人をあらわす名前。

とても大事なものだ。

それくらい分かる。

さて自分は、あの子供に合う名前なんて思いつけるのだだろうか?

まだ定春にくるまれている子供に目をやる。

特徴的な髪と目の色。

幼い顔立ち(子供なのだから当たり前)。

……焼けるような、太陽の色。

「……夕」

「え?」

「夕ってのはどうだ?」

すぐに漢字変換が出来なかったのか、神楽が頭に字を思い浮かべているようだ。

「ゆう、って、夕陽の夕アルか?」

「安直ですね」

子供の髪の色から、夕陽を想像した。

本当に、ただそれだけ。

安直だとは、自分でも思う。

「夕、ゆう……私、それがいいヨ。呼びやすいし」

「まあ、確かに呼びやすいね。いいんじゃないですか?あの子が気に入ればの話ですけど」

すんなりと通った。

意外にも。

もうちょっと反論が出るかと思っていたが。

まあいいか。

「んじゃ、とりあえず仮決定。あとはあのガキが起きてからだ。それまで俺ァ、ちょっと寝るわ」

「え」

「まだ寝るつもりですか」

二人からぎろりと睨みつけを食らう。

お前らはあれを聞いてないからいえるんだ。

まあ、聞いてない方がいいとは思うが。

「昨夜はあんま眠れなかったんだよ。眠らせろ」

そういうと、子供の隣、定春に寄りかかった。

ちなみに、定春ものったりと眠っている。

その毛はふかふかとして気持ちいい。

やや高い犬の体温と、太陽の光を感じる。

たまにはこんな昼寝もいい。

さて寝ようかと言う時に、二人もいそいそとこちらにやってきた。

「私らも昼寝ネ」

「たまにはのんびりしようかと」

俺と夕の隣に陣取って、二人も定春に寄りかかる。

寝る気満々だ。

おいおいと思ったのは最初だけだ。

あとはまあいいやと、そんな気分になった。

「それじゃ、昼寝ターイム」

「らじゃー」

宣言すれば、既に眠そうな神楽の返事が返ってきた。


秋の昼下がり、わざわざ室内で、みんなでだんごのように固まって眠った。


体温を感じて
(温かいそれが、心地良くて)