ナルトはヒナタと共に、里の外の町で買い物をしていた。

それはヒナタに請われたもので、ナルトも了承し、二人で露店などを見て回っていた。

二人の表の姿は目立つし、色々な意味で名が通っているので、変化の上である。

その際、ヒナタから煌の姿に化けるようにと、条件を受けて、その通りにしていた。

ナルトには理由が分からなかったが、特に反対する理由もなかったからだ。

昼過ぎに出かけ、夕暮れになるまで、二人でぶらぶらとしていた。

「そろそろ帰る時間じゃないか、ヒナ」

夕飯を作り始める時間は、いつものこのくらいだった。

ヒナタは時計を見て、嬉しそうに頷く。

「その前に、寄って行って欲しい場所があるの、ナル」

「ん?」

どこだと聞けばヒナタは着くまでのお楽しみだと、告げた。

買い物をしていた町の郊外の、空き家のような建物。

ヒナタはナルトをここに連れて来た。

「何だ?」

「いいから、さ、入って、入って!」

ヒナタは満面の笑みを顔に乗せている。

ぐいぐいと、ナルトを中に押し込んだ。

仕方なく、ナルトは扉をあけようとして。

パパーンッ

盛大な音が響いた。

「煌様、誕生日、おめでとうございます!」

「……え?」

中には、たくさんの暗部……というか大半?がいた。

建物の見た目より中が広く感じる。

ナルトは、時空間忍術で空間を調整していることに気付いた。

(そこまでして、何を……?)

そう思いかけて、ナルトはあ、と声をあげた。

今、彼らは。

(誕生日……ああ、今日は十月十日か)

すっかり忘れていた。

毎日毎日を忙しく過ごしているナルトは、あまり日にち感覚がない。

あっても、仲間のことが一、任務が二、自分のことは三の次なのだ。

だから、自分の誕生日というものをすっかり忘れていた。

びっしり、ずらっと並んで敬礼している暗部たち。

その中には、おそらく準備に加わっていたのだろう、玲と慧がいた。

「ふふ、驚きました?」

「ま、発案はこいつらですが」

主な発案者は、煌の直属の部下たちであるらしい。

つまりは、暗部前線部隊。

彼らは、熱狂的な煌の崇拝者でもある。

「私があなたをここへ連れてくる役目だったんです。どうですか、ご感想は?」

このために、煌に化けろというお願いだったのか、と煌は内心で納得する。

それから、キレイに飾られた部屋と、部屋に真ん中にある大きいバースデーケーキ。

それを囲むように置かれているプレゼント。

にこにことした仲間達に、嬉しそうな部下達。

それを一通り眺めて、煌は嬉しそうに笑った。

「ありがとう、嬉しいよ」

途端、歓声が巻き起こったのは、言うまでもない。


蝋燭は、八本。

それは、煌が暗部総隊長を努めている年にならっている。

暗部同士なので、互いの年齢や素性は、基本的に知られていない。

当然、煌たちの実年齢も、彼らは知らない。

故に、感謝を込め、暗部総隊長としての煌を祝ったのだ。

蝋燭を消した後、凛と玲(ケーキは玲、他女性暗部たちの大作らしい)がケーキを切り分け、そしてプレゼントが煌に渡されていった。

その数、数千。

実は、暗部はそこまで人数の多い部隊ではない。

各部隊に分かれてはいるものの、総勢でも二百を超えるか否か程度である。

だというのに、そんな数になっているのは。

「煌様、これ、今年の誕生日プレゼントです!

医療部隊で開発したのを貰ってきた、急性治療薬と、どんなにすばやい動きにも対応する湿布と、麻痺と毒と眠気を誘う薬と……」

「……あの、おめでとうございます、煌様。これ、木の葉の知る人ぞ知る武器屋から分けてもらったやすりと油と磨き布と……」

「これ、この前の任務の報酬で貰った術書なんです!珍しいのが結構あったので、ぜひ煌様に渡したくって!

火が跳ね回った後、触れた相手を氷付けにする術に、ほら、こちらは煌様がお好きな時空間忍術の……」

一人ひとりが渡す量が、半端ではないのだ。

凝ったものから簡単なものまで、それぞれが一通りのものをそろえてやってくる。

基本的に任務関係のものが多いのだが……それは忘れて貰おう。

たまに、ちゃんとしたものを持ってくるものもいる。

「あのあの、煌様!これ、使ってください!私たちで作った手袋です!」

「色々術をかけておきました!これで冬も温かいです!」

「煌様には凛様がいるのはわかっています……それでも受け取って欲しいんです!」

後ろから若干の殺気を感じながら、煌は苦笑してそれを受け取った。

ありがとうと一言礼を言えば、彼女達は顔を真っ赤にして去って行く。

凛が彼女達に放っていた殺気を、そこでようやく収めた。

次から次へと、プレゼントが渡されていく。

一通り暗部のが終わった後は、分隊の分だ。

これまた多い。

特に銀羅は、煌の熱狂的な崇拝者の一人である。

その量は、一般的な忍を凌駕する。

どさりという形容詞が似合いそうなほどのものを持ってきた銀羅にも、煌は微笑んだ。

「今日のために無茶をしたようだな?体に気をつけろ」

そういえば、銀羅は勿体無いお言葉とばかりにばしりと礼を決める。

黒や言などは、いたってシンプルで実用的なプレゼントだ。

新参者である言などは、あまりにも規模のでかい誕生日パーティーに驚いているようだ。

それから、零班。

玲、慧、凛、と次々とプレゼントを渡していく。

玲と慧は一緒にだった。

互いに、何がいいかを検討した上で、プレゼントを決めたらしい。

ちなみに、それはナルトが欲しがっていた(ぼやいているのを聞いていた。同居しているものたちの特権)某遠国の歴史書だ。

それから、凛は銀羅よりもさらに多い量のプレゼント。

彼女のプレゼントだけで煌の私室は埋まりそうである。

凛は、いつも自分で考える。

煌が欲しいもの、望むものをできるだけ多く考えた後、その中で喜んでもらえそうなものを選び、そしてそれを全て買い込むのだ。

ある意味豪快な買い物である。

全てのプレゼントを受け取り終えて(埋もれそう)、煌は微笑んだ。

「ありがとう。お前達は最高の仲間、それから部下だよ」

その言葉に、またみんなも笑い返して、声をそろえて言った。


「誕生日おめでとうございます、煌様!」