二話 「将来の夢は火影を越す!!ンでもって里の奴ら全員にオレの存在を認めさせてやるんだ!」 晴天の下、ナルトはそう宣言した。 班としての初めての顔合わせでの自己紹介。 その言葉にサクラは不思議そうな顔を、サスケは興味なさそうな様子を。 そしてカカシはとても複雑そうな顔を見せた。 ナルトの自己紹介から少し間を空けてから、ハッとしたように次を促す。 「野望はある!一族の復興と、ある男を必ず……殺すことだ」 その言葉には少し殺意が込められている。 サクラは顔を赤くし、ナルトは不安そうな表情になった。 『サスケには、一族のこと……伝えないんですか』 聞こえた“音”に、ナルトは表情を変えないまま答える。 『まだ考えている。赤露は時期が来るまで知らせたくないと言っていた。 彼の意見を尊重してやりたいが……復讐にばかり走らせるのも良くないな』 表面上は脅すように説明をする上忍と若干怖気付く下忍。 中では全く違う会話をしていた。 チャクラを繋ぐようにして声を届け会話する印話は、零班と分隊のみに教えられている。 二人はそれを使って会話していた。 カカシの配った演習の説明書を受け取りながらナルトは思考をめぐらせる。 少ししてから言葉を続けた。 『何とか、俺が里に傾くように誘導してみる。上手くいかなかったのなら慧と相談してまた手を打つ』 『申し訳ありません』 若干沈んだ声を聞いて、ナルトはことさら明るく言った。 『お前のせいじゃない。じゃあ、またな』 演習の説明は既に終わって解散になっている。 カカシは立ち去る直前に、心の中だけで敬礼した。 「ここにスズが二つある……これを俺から昼までに奪い取ることが課題だ」 演習の日、カカシがスズを見せながらそう説明する。 ナルトたち三人は緊張の面持ちでそれを聞いていた。 不意に、ナルトがカカシに話しかけた。 『来ている。影分身を置いていく。サスケに自信喪失にならない程度に力の差を教えてやっといてくれ』 カカシの返事を待たずに、ナルトの本体は消えた。 影分身との入れ替えが全く分からず、カカシは心の中だけで絶賛する。 (さすが煌様……見事です) 「よーい……スタート!」 自分も任務を果たさねば、とカカシは気合を入れて宣言した。 煌は愛用の双闇を手に、侵入者の首を落としていく。 忍術を使うまでも無かった。 力の差は歴然、最後の一人を気絶させるのも容易だった。 「こいつは情報収集部隊に引き渡すか」 そこで煌は初めて印を組み、術を発動させる。 時空間忍術によって、男は掻き消えるように姿を消した。 それからまた特殊な忍術を発動させ、侵入者達の死体を消していく。 それも完璧に終わって、ようやく煌は一息ついた。 「これから当分は刺客が途絶えないだろうな」 玲が大忙しだ、と付け加えて、煌は姿を消す。 そこには、数分前と全く変わらない景色があった。 ナルトが戻る頃には、影分身は罠に引っかかって吊り下げられていた。 入れ替わりにくい状況なので、ナルトは様子を見守ろうとすぐ上の木に着地する。 カカシは少し離れたところでサスケと組み合っていた。 (イタチとまでは行かないが、新人下忍としてはなかなかの体捌きだな。独力で磨いたのか) 少し顔を動かせば、ショックで気を失っているサクラが見える。 おそらくカカシが幻術をかけたのだろう。 (サクラはチャクラコントロールが上手い兆しがあったな。 幻術系に……鍛えれば医療忍術も習得できるかもしれない) 医療忍者は少ない。 それに、多くいて困ることは無い。 ナルトは後で三代目に進言してみようと決めた。 そうこうしている内に、ナルトの影分身は縄から抜け出して、 本体が入れ替わりやすいように丸太に向かう。 ナルトは小さく頷いて、影分身と入れ替わった。 演習を終えて、解散となった。 明日から下忍として働くことになる。 つまり、忙しい。 『煌様、どうかご無理をなさらないよう』 『分かっている。ああ、それから』 一回言葉を切って、ナルトはサスケとサクラに気づかれない程度の自然さで、カカシに顔を向ける。 『さっきの言葉は良かった。とてもいい言葉だ。覚えておく』 “忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴は、クズ呼ばわりされる。 けどな、仲間を大切にしない奴は、それ以上のクズだ” 『俺も、そう思うよ』 ナルトは微笑んだ。 カカシは敬礼しそうになるのを何とかこらえて、印話だけで伝えた。 『勿体無いお言葉、光栄です!』 ナルトはひらひらと手を振って去っていく。 カカシは、それからしばらく、嬉しさのあまりそこで立ち尽くしていた。