四話


ザク、と木に刃物が突き刺さる音。

ナルトの身長以上の長さがあるそれの上に、人が立っていた。

「へーこりゃこりゃ、霧隠れの抜け忍、桃地再不斬君じゃないですか」

少し再不斬を見ていたカカシは、下忍として向かおうとするナルトを制する。

『煌様、ここは私が』

『……分かった、任せる』

「邪魔だ、下がってろお前ら」

(お前なんかに煌様の手を煩わせてたまるか)

カカシは額宛を上げ、左目の写輪眼を露にした。


再不斬は霧に紛れ、姿を隠した。

三人はきょろきょろとしながら姿を探す。

「どんどん霧が濃くなってくってばよ!」

「八箇所……」

霧から響いた再不斬の声に、サクラがびくついた。

次々と、再不斬が人体急所の八箇所をあげていく。

再不斬の術をコピーし始めたカカシの殺気に、サスケが震えた。

「サスケ……安心しろ、お前達は俺が死んでも守ってやる。

オレの仲間は、誰一人殺させやしなーいよ!」

カカシがサスケを元気付けるように笑う。

だがナルトは意識をそちらではなく、霧の方に向けていた。

(互いに狙いを定めているか。共に分身が一体ずつ、いや……)

次の瞬間、再不斬が三人とタズナの間に現れた。

カカシはすぐさま三人を弾き飛ばし、再不斬と相対する。

「先生!!後ろ!!」

カカシの後ろに、もう一人再不斬が現れた。

だがその瞬間、カカシは水となり、今現れた再不斬の後ろに立っている。

再不斬にクナイを突きつけ、カカシは悠々と告げた。

「終わりだ」

『煌様、こいつどうします?』

ナルトはこの瞬間、カカシが気づいていなかったことに気づいた。

再不斬の水分身が、二体であることを。

『!!違う、そいつも水分身だ!』

「!」

カカシがその言葉で本物の再不斬を探そうとした時には遅かった。

本体に攻撃をかけられ、攻防の末、カカシは湖に蹴飛ばされる。

(くっ、油断した、……!?な、なんだこの水、やけに重いぞ……)

『すぐにその湖から抜け出せ!その湖は既に再不斬の術がかけられている!』

ナルトに言われ、カカシが出ようとしたとき、カカシの後ろには既に再不斬が立っていた。

「フン……バカが」

(しまった!)

再不斬の術で、カカシは水に閉じ込められてしまう。

脱出しようともがいてみたが、水牢はびくともしない。

『す、すみません煌様!』

(やばいやばい!帰ってあの三方にこの失態を知られたら……)

カカシの顔はすぐさま真っ青になった。

(まじで殺される……!)

ナルトは表で恐怖に怯えながら、小さくため息をついた。

『三人には黙っておいてやる。だからそう青くなるな。冷静になれ』

その言葉にカカシはハッとなる。

そして改めて状況を考えた。

(今のままの煌様とサスケたちじゃこいつは分が悪すぎる!)

煌なら影を見せることなく再不斬を殺れるが、煌はあくまで最終手段だ。

彼らには、下忍としての対処方法を教えなければならない。

「お前らァ、タズナさんを連れて逃げろ!」

それしかない、とカカシは声を張り上げる。

三人は恐怖にすくみ、ナルトは既に再不斬にけりつけられていた。

だが、ナルトはそのまま口元だけで小さく笑う。

『安心しろ。必ず、出してやる』

『煌様!?』

「さーて、暴れるぜぇ……」

今度は口元だけでなく、ナルトは笑った。


『煌様、何をするおつもりですか!』

『まあ見ていろ』

カカシは早く子供達とタズナさんを逃がして欲しかったのだが、

それを裏腹にナルトはサスケに作戦をもちかけた。

それを伝えきる前にサスケは再不斬に襲われたのだが、それでもナルトは平常心を崩さない。

多重影分身をして、再不斬に襲い掛かった。

それは全て弾き飛ばされ、そして残ったナルトは手裏剣をサスケに投げつける。

それを受け取ったサスケはナルトの意図を理解し、また、同じように小さく笑った。

(サスケの奴まで……煌様は何をしようとしている!?)

カカシは全く訳が分からないまま、サスケが手裏剣を投げるのを見ていた。

その手裏剣と、手裏剣の影に隠れていた手裏剣も再不斬に避けられた瞬間、

隠れていた手裏剣が、ナルトになった。

(え!?)

そしてナルトがクナイを投げつけ、再不斬の水牢の術を解く。

傷をつけられた再不斬は、怒り狂ってナルトに刃を向けた。

自由の身となったカカシはあわててそれを止める。

『もう、油断するなよ』

水に浸かったまま、ナルトは少し離れた。

『ありがとうございます、煌様!』

名誉挽回とばかりに、カカシは写輪眼を最大限に駆使して、再不斬を追い詰めた。

止めを刺そうというときに、再不斬の首に二本の千本が突き刺さる。


木の上に、面をした少年が立っていた。