八話


外もなかなか大変のようだが、カカシの力量なら何とかなる。

ナルトはそう思いながら、白の攻撃を少しずらしながら避けていた。

サスケも、少しずつその動きを見切り始めている。

(もう少し、か)

サスケの集中力は極限にまでに高まっている。

あとはきっかけだけだ。

そして、ある攻撃でサスケは完璧に白の攻撃を見切った。

その両目には写輪眼が現れている。

(開眼した、な)

ナルトはその眼を観察していた。

(まだ開眼したてで未熟だが……鍛えればもっと成長するな)

写輪眼の訓練はカカシに任せるとして、とナルトが考えていると、白が長期戦は不利と見て、勝負に出た。

その動きを冷静に見てから、ナルトは動いた。


サスケの首にはいくつかのの千本が刺さっている。

倒れたサスケを、ナルトは受け止めた。

「お前は死ぬな……」

サスケはそれだけ言って、倒れた。

白がその行為に敬意を示してから、氷に戻っていく。

ナルトは、少しの間、サスケを眺めていた。

「仲間の死は初めてですか……これが忍の道ですよ……」

「そうだな」

「!」

「任務の間、部下がたくさん死んでいく……それでも俺たちは、先に進まなければならない。

自分のため、まだ生きている仲間のため、部下のため、里のために」

サスケの首に刺さっている千本は、サスケを仮死状態にしているだけだ。

ナルトはそれを丁寧に抜きながら止血していく。

「医療忍術はあまり得意ではないんだけどな……まあこれくらいは問題ないか」

抜き終わって、サスケの息を吹き返させた。

仮死状態の時間は短いほうがいい。

そう簡単に目覚めないように、強制的に眠りを促す秘孔をついておく。

「殺したくないのなら、最初から戦わなければいいのに。いや、出来ればいいのに、だな」

「君は……?」

明らかに空気の変わったナルトに、白が戸惑う。

試しに、程度に千本を一本投げてみた。

ナルトはそれを見ることもなく手で掴む。

「お前くらいの力があれば分かるだろう?」

ナルトはそれを投げ捨てる。

千本が音を立てて落ちた。

それから、自分に刺さった千本も抜いていく。

傷はすぐにふさがった。

「面倒なことさせて済まないな、九奈」

「九奈……?」

「いや、こちらの話だ。さて、と」

自分とサスケの応急処置を終え、ナルトは立ち上がった。

白が警戒する。

ナルトは印を組むべく構える。

「ここまでは、任務だ」

ナルトの手が、高速で印を組み始めた。

「そしてここからは……俺のわがままだ」


カカシの忍犬たちが再不斬を抑えている。

カカシは、自身が編み出した雷遁、雷切を当てるべく、再不斬に向かって走り出した。

そして大きく振りかぶった瞬間、カカシは目を見開いた。

その手の先には、白がいる。

そして手が差し込まれた場所からは、血があふれ出ていた。

「ザ……再不斬さん……」

カカシはその時、自分でもよくわからない違和感を感じていた。

何かがおかしい、あるべきものがそこにないような違和感を。

だが、気づいた時には再不斬はこちらを攻撃しようとしていたので、一度考えを打ち消し、

手を白に貫かせたまま、再不斬と距離をとる。

そして血塗れになった手を白から抜き、目を閉じて横たえる。

そして再不斬の霧が晴れ始め、ほぼ同時に、サクラとカカシはナルトをその視界に入れた。

「ナルト!サスケ君はどこ!?」

「あっちで倒れてるってばよ!白に何されたかは分かんねーんだけど、息はあるってば!」

叫ぶと、サクラはタズナと少し会話した後、一緒にサスケの元に向かった。

『煌様、一体何がどうなって!?』

『カカシ、油断するな、再不斬との戦いは続いているぞ!』

カカシはハッとして、その次の再不斬の攻撃をかわす。

応戦するべく、クナイをその手に取った。

ナルトは、カカシと再不斬の戦いはすぐにでも決着が着くだろうと見積もる。

サクラはサスケが無事なことにほっとしたようで、タズナと共に怪我の手当てをしている。

そう遠くない場所にに大量の気配が二つあることにも気づいていた。

(できれば“そう”であることを望んでいる)

ナルトは誰も自分に注意を払っていないのを見て、印を組み始める。

とても長いその印が組み終わる頃、カカシは再不斬の両腕を使えなくし、決着は着いた。

そして、大勢の男達を引き連れたガトーたちが現れる。

ガトーはそこで、最初から再不斬を殺すつもりであったことを白状する。

そして横たえられた白を、借りがある、とけりつけようとした。

ナルトは、クナイを一本、ガトーの足に向かって投げつけた。

ガトーは辛うじてそれを避ける。

「な、何をする、ガキ!?」

「白にそれ以上近づくんじゃねーってばよ」

『煌様、一体何をするおつもりですか!?』

『……カカシ、しばらく、成り行きに任せておいてくれ』

カカシはナルトに言われた意味を考えた。

成り行き……ナルトの演技に付き合えということだろうか。

ナルトは、先ほどからずっと、再不斬につっかかっている。

おそらくそうだろうと当たりをつけ、カカシはナルトの調子に合わせた。

ナルトは、白は何よりも再不斬を思い、再不斬のためだけに戦っていたことを告げる。

それだというのに、何も思わないのか、と再不斬をたき付けた。

再不斬はナルトの言葉に、涙しながらこう答えた。

「小僧……それ以上は……何も言うな……」

その言葉に、ナルトは言葉を止める。

再不斬は、白は優しすぎた、と口布を噛み切りながら言う。

「忍も人間だ……感情のない道具にはなれないのかもな……」

そしてナルトは、クナイを再不斬に頼まれた通りに投げる。

そしてそのまま、とっくに印を組み終えていた術を発動した。

クナイを通して、その術は再不斬にかかる。

(やっぱり、そうなんじゃないか)

再不斬はクナイを口にくわえ、ガトーのつれてきた集団に向かって走っていく。

(お前も、あいつを、白を大事に思っていた)

どれだけ刺されようとも、どれだけ傷つこうとも、再不斬は一直線にガトーの元へ向かう。

(互いに道具になろうとしてなりきれなかった忍たち……忍である限りずっとつきまとう葛藤……)

そして最終的に、再不斬はクナイでガトーの首を斬った。

(その中で、それでも生きようとしたお前達は……)

そして、再不斬は血塗れのままその場に倒れ伏せる。

(とても素晴らしい忍だと、俺は思うよ)


ナルトは、ただ、小さく頭を下げた。