時刻は深夜。辺りには累々と積み重なる死体の山。 その中心にいるのは、姿も力も人を超越した神聖なる獣たちの神。 叫びと力の無い呟き、そして悲しみと怒りだけが交錯する場所。 そこに向かって歩み寄る人間が一人、何かを呟いた。 1 朝日が窓から差し込んでいる。 最も、ここ木の葉の里は一年を通して晴れの日が多く、朝から曇っていることなども滅多に無いのだが。 その光に目を覚まし、金色の髪を持つ少年は起き上がった。 「ふぁ…もう朝か」 (また、あの日の夢か…) どうやら少々夢見が悪かったらしい。 少しだけ顔をしかめた後、少年はベッドから降り、身支度を整え始めた。 すると、ドアの向こうから黒髪の少女が顔をのぞかせる。 「あ、ナル!おはよう!」 そういって少女はナルと呼んだ少年―――――――うずまきナルトに笑顔で抱きついた。 抱きついてきた少女を抱きしめ返し、同じく笑顔で挨拶し返す。 「おはよう、ヒナ。ヒナはいつも早起きだな。昨日も遅かっただろ。あんまり無理するなよ」 「大丈夫よ。ちゃんと必要な分の睡眠はとってるし、それに早起きするとナルの寝顔が見られるもの!」 そういって、ヒナと呼ばれた少女―――――――日向ヒナタはもう一度笑って言った。 「朝ご飯出来てるよ。いのちゃんももう起きてるしね」 「じゃあ向こうもシカを起こしている頃か…」 二人がそういいながら部屋を出ると、ちょうど向かい側から少年と少女が一緒に出てきた。 「あ、おはようシカ、いの」 「おはようシカ君」 その声に気がついたのか、 向こう側のいの―――――――山中いのと、 眠そうなシカ―――――――奈良シカマルも挨拶し返してきた。 「よう、おはよ、ナル、ヒナ」 「おっはよーナル!」 今起きたばかり(起こされたばかり)のシカマルと違って、 いのは既に朝ご飯を作るためにヒナタと早起きしているため元気だ。 「ナルの方も起きたみたいだし、ちょうどいいわ!朝ご飯食べましょ!」 二人に座っててと言った後、少女二人は朝ご飯を盛るため台所に戻った。少年二人はそのまま席に座る。 「シカ、今日の下忍の方の任務は?」 「あ〜確か…木の葉の外れの辺りにある農家の収穫の手伝い、だった」 嫌そうな顔をしたシカマルに、ナルトは苦笑する。 「肉体労働か、大変だな」 「お前の方はどーよ。」 「大名の蔵の整理!そのあと子供のお守り。」 「そっちも肉体労働…しかも精神労働まであるじゃねーか」 子供のお守りはそれなりに疲れる。肉体的だけではなく、精神的にもだ。 お互いを見合わせてため息をつく。 「全く、下忍って大変よね!」 朝ご飯を盛り終わって台所から戻って来たいのが言う。 「そうそう、今日は私のところは引越しの手伝い!あれって腰が痛くなるのよね」 続いてヒナタもやってくる。二人は皿を置いて、席についた。 「「「「いただきます」」」」 四人で手を合わせ、朝食を食べ始める。これが、四人の日常。 「荷物運びか…ヒナも無茶しないようにな。今日も夜に任務あるんだし」 「うん、分かってる。ありがとう、ナル」 二人の方からほわほわとした雰囲気が漂ってくる。 それを感じつつも見て見ぬふりを決め込んだ二人は黙々と食べている。 「二人は朝からラブラブねー」 「まあ、あいつらは俺らと違って昼間は同じ班じゃないからな」 うずまきナルト・日向ヒナタ・奈良シカマル・山中いの。この四人は暗部である。 うずまきナルトこと、暗部総隊長兼暗部第零班隊長兼暗部前線部隊統括・煌。 日向ヒナタこと、暗部総隊長補佐兼暗部第零班副長兼暗部医療部隊統括・凛。 奈良シカマルこと、暗部第零班参謀兼暗部暗号解析部隊統括・慧。 山中いのこと、暗部第零班参謀補佐兼暗部情報収集部隊統括・玲。 暗部第零班は暗部全員の頂点に立つ。暗部トップのこの四人は神帝≠ニも呼ばれている。 そして任務の一環として、下忍の護衛もやっているのだ。 ナルトは下忍第七班。ヒナタは第八班。シカマルといのは第十班だ。 二人と違って昼間は離れているのだ。お互いを心配するのは当然というもの。 「げ、もうこんな時間か。俺はもう行かなきゃな。ご馳走様、ヒナ、いの。今日も美味かった」 時計を見てナルトが慌てて立ち上がった。四人の中で一番出発が早いのはナルトである。 いくら急いでいても、立ち上がる時にヒナタといのを労うことは忘れない。 「ありがとう、ナル」 「ナルはいつも言ってくれるから嬉しいわー」 いのは横目でシカマルを見ながら言っている。シカマルは居心地悪そうに視線を逸らした。 ナルトは下忍として持っていくもの、緊急に備えて暗部として持っていくものを隠し持ち、家を出る。 「それじゃ、行って来る」 「はい、お弁当。気をつけてね、ナル!」 ヒナタはナルトに弁当を投げる。 全く揺れず水平に投げられたそれを、ナルトもまたバランスを崩さずに受け取った。 「サンキュ!」 「「いってらっしゃい。」」 二人はナルトを見送った後、戻って自身も支度を始める。 「それじゃ、いってきます。それからいってらっしゃい、いのちゃん、シカ君」 「うん、ヒナタも行ってらっしゃい。それから行ってくるわ!」 「じゃーな」 三人は同時に家を出る。もちろん同じ班なのでいのとシカマルは一緒。 行ってきますといってらっしゃいを同時に言って、三人は家を出た。