十話 カカシの体も治り、橋も完成し、ナルトたちは木の葉へと帰還した。 ナルトは帰った後のことを思うと、やや足が重いらしく、表面上はいつもの演技を保ちながら、 何回かこっそりとため息をついた。 『煌様、どうしました?』 今回、何度も煌を働かせたカカシは、また何かあったのかと気が気でない。 だが、ナルトはひらひらと手を振っただけだった。 『いや、大丈夫だ』 それから、ぼそ、と。 『一応謝っておく。済まない』 『え?』 カカシは詳しく尋ねようとしたが、ナルトはため息をつきながら歩き続けただけだった。 (なんだか、前もそんなことを言っていたような……) 怒るなとか何とか。 煌のすることなら、自分は何も言わないのに、とカカシもため息をついた。 嬉しいような悲しいような帰還。 ナルトはとりあえず三代目のところに向かった。 「火影様、ただいま帰りました」 「おお、戻ったか、煌。して、どうだった?」 「まあ、色々と……大変でしたが、任務は遂行しました。この通りに」 組織を壊滅した証を三代目に渡す。 三代目はそれを確認した後、煌をねぎらった。 「ご苦労だったな。して、大変、とは?」 「……後に、あちらから報告が上がるでしょう。 多少頭が痛くなるかもしれませんが、何とか……しておきます」 煌は無礼にならない程度にため息をつく。 三代目はその意味を汲み取って、やや苦笑した。 (あの子たちが怒るような何かがあったのじゃな……) 「まあ、頑張れ。今夜はお前は休め。明日は下忍の方も休みにしよう。 しばしの休息で鋭気を養うがいい」 これが三代目にできる精一杯の慰めだ。 煌もその意味を読み取り、素直に礼をする。 「ありがとうございます。それでは、失礼します」 「さて……帰るか」 はあ、と煌はやはりため息をついた。 家に帰ると、まずヒナタが飛びついてきた。 「ナル、お帰りなさい!」 「ただいま、ヒナ」 満面の笑みでの出迎えに、ナルトも心が安らいだ。 ほっとしたように微笑み返す。 「ああ、もう!何週間もかかるなんて!カカシの奴、どついて来ようかしら!」 あくまでヒナタは笑顔だ。 はは、とナルトは苦笑する。 「あいつも大分疲れているだろうから、我慢してやってくれ」 「ナルが言うなら!」 何十日も会えなかったナルトとの再会で、ヒナタはご機嫌のようだ。 「何か食べる?」 「ああ。昼飯、まだだからな。頼む」 「分かったわ!」 その足取りは軽い。 それを見送りながら、ナルトはとりあえず荷物の整理をする。 着替えなどは洗濯もの入れに入れて、武器を取り出し磨いておく。 その他持って行ったものを所定の場所にしまってから、ダイニングに向かった。 「軽いものだけど」 「助かる。ありがとう、ヒナ」 ヒナタが用意した軽食に手をつける。 即興でも味の損なわれていないそれに、ナルトは帰ってきたことを実感する。 「シカといのは?」 「二人とも、まだ下忍の任務よ。あと数時間のうちには帰ってくると思うわ」 「そうか」 ヒナタはナルトの前に座って、にこにこしながらナルトが食べるのを眺めている。 だが、ナルトの返事に僅かに首をかしげた。 「何かあったの?」 「何か……まあ、そうだな。二人が帰って全員揃ったら、説明する」 「……分かったわ」 何回も説明するのが大変なほどのことが起こったのかと思い、ヒナタはそれ以上何も言わなかった。 ナルトは軽く礼を言って、帰ってくるまで書類仕事をやるといった。 暗部の総隊長ともなれば、書類業務もそれなりに多くなる。 ナルトが不在の間はヒナタがやっていてくれただろうそれの残りを受け取る。 「無理はしないでね」 「ありがとう」 何十枚、三桁にも届きそうなそれを見て、ナルトは苦笑しながら仕事を始めた。 書類が半分ほどなくなったころ、シカマルといのは帰ってきた。 「ナル、帰ってきてるわよね!?」 帰ってくるなりいのは叫びながら家に入る。 「うん」 ヒナタが笑顔で頷き、いのは家に駆け込んだ。 「ナル、お帰りーっ!」 後ろからめんどくさげにシカマルが続く。 「ナル、お疲れさん」 その声に、ナルトは書類仕事を中断して、部屋を出る。 全員揃った。 ならば、彼らのことを説明しなければならない。 けど、その前に、自分の帰りを喜んでくれた仲間に、感謝の言葉を送る。 「ありがとう。ただいま、いの、シカマル」