十五話


ナルトはなんとか三人を宥めすかしたあと、突然割り込んできた第二の試験の試験官と共に、

第二の試験の会場だという場所に向かった。

試験官であるアンコは、そこで試験の説明を始める。

その途中、意気込んだナルトにクナイをなげつけた。

ナルトの頬から血が流れ、アンコがそれをなめる。

ナルトはアンコが離れた瞬間、術を発動した。

“ナルト”は変わらず、そこにいた。


「落ち着け、お前ら!ほら、相手は俺を知らないわけだから!」

「知らないことは罪だ!」

「粉々に壊してやるわ」

「脳細胞破壊してやる」

試験の説明しているところから少し離れたところで、ナルトは必死に三人を抑えていた。

あの瞬間、ナルトは時空間忍術を発動し、一瞬で、自分を含めた四人をここまで運んだ。

危ないと、思ったからだ。

アンコの命が。

既に若干二名ほど、気配が危ない。

唯一の良心さえ、既に理性が危ういところにある。

「これは任務だ!下忍の護衛任務を受けたときに言っただろう?

どんなことがあっても表のときに裏を出してはいけないと!」

ちなみに、一人では三人を抑えきれないので、ナルトは影分身している。

二人の影分身と本体が、必死にそれぞれ三人を捕まえていた。

このままだと時間の問題だと思ったナルトは、小さくため息をついて、全員に耳打ちした。

しばらく間が空いた後、三人は動きを止めた。

だが、その後の反応はまた三者三様である。

ヒナタはぽーっと顔を赤くしているし、シカマルは顔を青くしてうな垂れ、いのは顔を輝かせている。

「……いいか?」

「「はいっ!」」

「はい……」

最終確認にナルトが問うと、ヒナタといのは元気よく、シカマルは力なく頷いた。


三人が咄嗟にナルトが残した影分身と入れ替わるころには、

説明は終わり、巻物を受け取る段階に入っていた。

影分身に書かせていた同意書と、他二人の同意書を持って、巻物を受け取る。

そして決められたゲートから、死の森に入った。

(さて、これからが大変だな……)

近くには既に誰かがいる。

(大したことはないな……こいつはサスケでもやれるだろう)

サクラにも注意を促すため、わざとナルトは二人から離れて相手に捕まった。

それから、おそらく気付くだろうサスケが来るのを待つ。

数分待つと、やはりサスケがナルトを見つけ、クナイを投げてくれた。

ナルトはそれで自分を縛る縄を切ると、戦いに参加する。

やがてその忍はサスケが撃退し、三人は改めて警戒を強くした。

そこでナルトは二人に気付かれない程度に気を探る。

(誰か、いる……それも手鍛だ!誰だ……!?)

覚えは無い。

だが、確実に下忍の手に負えるようなレベルの忍ではない。

(来たな……)

中忍選抜試験の裏に隠れて、張り巡らされている陰謀。

その一端が、目の前にいる。

ナルトは気を引き締める。

サスケが変化対策に合言葉を決めた瞬間、突風が吹いた。

ナルトはあえてそれに乗って流される。

(“行く”べきだな……)

そして立ち上がると、目の前には巨大な蛇がいた。

(蛇……)

ナルトは時空間忍術で双闇を取り出す。

そして一瞬後には、蛇を両断した。

(蛇……まさか!)

それから、ナルトは急いで印を組んだ。


サスケとサクラは、現れた敵の殺気に完全に怖気付いていた。

サクラは恐怖で体が動かず、サスケは必死にどう逃げるべきかを考えている。

二人の後ろから蛇が襲いかかろうとした瞬間、その蛇の首が一瞬で消えた。

血さえ流れず、蛇はその場に倒れる。

「え、何!?」

「何だ!?」

「!」

サスケもサクラも訳が分からず、襲撃者も不可解に倒れた蛇を凝視した。

そのサスケたちの前に、一人、男が降り立った。

「やはりお前か、大蛇丸」

「あなたは……木の葉の暗部ね?

どうしてこんなに到着が早いのかは知らないけれど……私の邪魔をしないでもらえるかしら」

大蛇丸は、顔の皮を破り、その顔を現した。

ぺろりと長い舌で顔をなめる。

「そういうわけにはいかない。俺が木の葉の暗部で、お前が大蛇丸である限りな」

暗部は武器を構える。

大蛇丸はにやりと笑った。

「甘いわね」

暗部の後ろに大蛇丸が現れる。

「危ない!」

思わずサクラは叫んだが、その途端、暗部は煙となって消える。

「影分身……」

大蛇丸は辺りを見回して本体を探した。

サスケたちもきょろきょろと暗部を探す。

すると、とん、と後ろから肩を叩かれた。

慌ててサスケは後ろを振り向いた。

そこにはあの暗部がいる。

「!?」

「助けておいた。いいか、ここから動くな」

暗部はその手に“ナルト”を抱えている。

「ナルト!」

「アンタは……一体……?」

暗部はサスケとサクラに“ナルト”を渡すと、再び武器を構えて大蛇丸に向かい合った。

「安心しろ、お前達には指一本触れさせない」

「ずいぶんな自信ね。それで、あなたは誰?」

邪魔をされたのがカンに障ったのかもしれない。

大蛇丸はつまらなさそうに、しかし面白そうに尋ねた。

「……暗部は、普通そう聞かれたところで名は名乗らないが……牽制代わりに、名乗っておくか」

暗部は、大蛇丸に殺気を飛ばしながら名乗った。

「俺の名は煌。木の葉暗殺戦術特殊部隊……総隊長だ」


銀髪の長髪が、舞った。