十七話


「ふむ、そうか」

煌から報告を受けた三代目は、しばし考えた後、分かっていることを告げた。

「実は、大蛇丸はみたらしアンコの元にも現れてのぉ。

中忍選抜試験を中断しないことと……うちはの血を狙っているらしきことを仄めかして行ったのじゃ」

「!」

煌は、面の下でやや目を見開く。

「七班には?」

「影をつけています。先ほど目覚め……今のところ、異常はありません」

どうやら、“ナルト”に、襲ってきたものの怖さと、煌が助けてくれたことを教えているらしい。

話の流れからだと、とりあえず試験を続ける心積もりのようだ。

その旨を伝えると、三代目は一度頷いて。

「決してうちはサスケから目を離すな。零班全員に警戒命令を出せ。

あとは……あやつが何を仕掛けてくるかの様子見じゃな」

「御意に」

煌は跪いて礼をする。

これで話は終わりだということを察して、退室した。


急ぎ、影もとい七班の元に戻りながら、煌は印話を繋いだ。

『銀羅、聞こえるか』

呼びかけると、すぐさま返事が返ってきた。

『煌様!試験で何かあったようですが、何が……いえ、ご命令を』

質問を飲み込んで、銀羅も任務モードに入った。

『試験に大蛇丸が現れた。当分は様子見、だそうだ。下忍の護衛は俺たちで何とかする。

お前は雪と戒に、砂と音の上忍の監視を怠らないように伝えてくれ。

それから黒と共に、三代目の護衛につけ』

『承知いたしました』

一気に指令を伝え、銀羅が承認したのを確認して、印話を切る。

そして今度は、零班の面々に繋げた。

『慧、ネジ班はどうしている』

『今、三人とも散って探索しているようです。全員に影をつけていますが、今のところ異常ありません』

『分かった。続けろ』

一度につなげるのではなく、個人個人で印話を繋げていく。

念には念を入れての盗聴防止のためだ。

印話は、距離が遠く、多人数とやる時ほど、その内容を傍受されやすい。

たとえ第三者が印話を習得していなくても、居場所などが感知されてしまう。

『玲、何か異常は』

『先ほど、みたらしアンコが大蛇丸と接触したらしいということを、

通りがかった暗部から聞きました。以上です』

『それについては三代目から説明を受けた。問題ない。引き続き頼む』

最後に、凛に繋ぐ。

『八班に問題はないか』

『巻物を入手、早々に塔へ向かっていますが……異常は、ありました』

ぴく、と軽く反応する。

煌は話すように促した。

『何だ』

『砂から来た三人の下忍、我愛羅、テマリ、カンクロウのチームをご存知ですね?

彼らの戦闘を間近で確認しました』

凛は思い出すようにその経過を報告する。

『かなり残虐性が高いと思われます。それに我愛羅は……人柱力だと伺っております。

間違いございませんね?』

『ああ、初対面のとき、彼女がそう言った。間違いない』

試験が始まる少し前に出くわしたときだ。

向こうは気づかなかったようだが、彼女は気付いて、煌に教えてくれていた。

『人柱力であの性格は、問題があると思われますが……』

砂の下忍、人柱力、凶暴性、条約、音との共謀。

幾つかの単語が煌の頭をめぐる。

それは、一本の線で繋がった。

『その下忍については、二次試験終了後に検討する。今は、八班の護衛に集中しろ』

『御意』

最後の凛とも、印話を切る。

(これは、厄介なことになりそうだな……)

当分は忙しいだろうと、煌は気を引き締めて、強く木の枝を蹴った。


煌が七班の影分身と入れ替わる頃、夜が明けた。

そして、それと同時に音の下忍たちが七班を襲撃に来た。

(大蛇丸の命ではあるようだが……大蛇丸が訪れたことは知らないようだな)

言動を見、ナルトはそう判断した。

実力は下忍から中忍程度、大体七班と拮抗、辺りに目はない。

(サスケを育てでもするつもりか?)

現時点ではそうとしか判断できない。

(まあ、いい踏み台になるか)

向こうは協力はしているが、チームワークはない。

おそらくかき集めの集団だろうと判断し、ナルトは“七班”で出来る作戦を考えた。

サスケの写輪眼と、サクラの抜群のチャクラコントロール、

そして“ナルト”の影分身を使ってできること。

まず、ナルトは何体か影分身に突っ込ませていった。

相手は、それを思い思いの方法で倒す。

それを確認した後、横にいるサスケに囁く。

「サスケ、見えたかってば」

「……ああ」

その意味を理解して、サスケは頷いた。

「女の武器は千本だ。太った奴は、腕から衝撃破のようなものをだした。

もう一人は……何か……周りが震えていたように感じたな」

上出来だとナルトは内心で微笑む。

それだけ分かれば、サクラなら答えを導き出せるだろう。

「ねえ、それって……音、じゃない?」

「音?」

ナルトは首をかしげ、説明を促す。

「ええ。音っていうのはつまり振動なの。

二人とも、その振動でナルトの影分身を破壊したんじゃないかしら」

「音って、要するに声だってば?そんなの、どうやって防げばいいんだってばよ!」

「声……」

(このくらいフォローを入れれば、サクラならやれるだろう)

「サスケ君、ナルト。私に考えがあるの。聞いてくれる?」

ナルトの考えどおり、サクラが作戦を提案してきた。

ナルトはすぐさま頷き、サスケも少し考えるそぶりを見せた後、頷いた。

聞いた後、ナルトはにんまりと、サスケはにやりと笑う。

こそこそと話すナルトたちに業を煮やしたのか、音忍たちが声を張り上げる。

「来ないなら、こちらから行くよ」

そして、それを合図とばかりに、ナルトたちも戦闘体勢を取った。

「今、行ってやるってばよ!」


ナルトは満面の笑みで、印を組み始めた。