十八話


「ナルト!」

サスケが声を張り上げる。

「おう!」

ナルトが返事をした時には、辺りに何十人ものナルトの影分身がいた。

それらが一斉に音忍たちに駆け寄る。

「何かと思えば同じ手かよ!浅はかだな!」

音忍の一人、ザクが手を構える。

だが、その手を他の音忍、ドスが抑えた。

「何だよ!」

「それを向けるべき敵は後ろだ」

ザクが上を見上げる。

そこには木から飛んだサスケとサクラがいた。

「は、確かにな!」

ザクはサスケとサクラに向かって攻撃を放とうとする。

ドスは目の前に迫るナルトの影分身たちに、

もう一人の音忍、キンは影分身の後ろの方にいたナルトに千本を投げつける。

「アンタが本体でしょ!」

ドスとザクの攻撃が放たれようというとき、急に二人の放とうとした音が消える。

「!?」

ドスが何が起こったのか確認しようとしたときには、すぐ目の前にナルトが迫っていた。

ドスはナルトの拳を慌てて避ける。

だが、ドスの意識はそこまでだった。

キンが隣を見れば、そこには既に倒れ臥せっているザクの姿。

よくよく見れば、服のあちこちが焼け焦げている。

「!?」

何が起こったのか全くわからないまま、とにかく目の前のナルトに千本を打つ。

影分身だと思って、本体はどこかとあたりを見回したとき、キンは吹っ飛ばされた。

「お前の千本なんて、痛くもかゆくもねーってば」

キンの目の前にいたのは、本体のナルトだった。

ザクを火遁を使って倒し、縛り上げていたサスケは目の前の木に向かって声をかける。

「作戦、うまく行ったぞ、サクラ」

その声に応じ、サクラは木の上から、得意そうな顔で現れた。

「ふふ、良かった」

その手には、飛び上がったドスを気絶させた太い木の枝がある。

「あれ、サクラちゃん、さっきのあれは?」

「ああ、逃がしたわよ。いつまでも捕まえてちゃ、可哀想だもの」

サクラはひらひらと手を振る。

それからナルトの代わりに、キンを縛り上げた。

「にしても、サクラちゃんほんとにすごいってば!まさかこんなにうまくいくなんて!」

「ああ、いい作戦だった」

「ほんと?」

ナルトがはしゃぎ、サスケも頷く。

サクラは嬉しそうに歓声を上げた。

ナルトの影分身の大半は本物の影分身だったが、その一体は、サスケが化けた姿だったのだ。

そして、木の上から降ってきたサスケとサクラは、共にナルトの影分身の変化。

本体のサクラはというと、ナルトが影分身を出した煙に紛れ、チャクラコントロールで森の中に入り、

“あるもの”を捕まえて音忍たちの背後に回り、木の上から“あるもの”を利用した。

「コウモリって、あんな風に使えるんだってば」

“あるもの”とはコウモリだ。

サクラは、ふと目に入ったコウモリの超音波を使い、音忍たちの音の術を相殺することを考えたのだ。

音を相殺した後は、ナルトに化けていたサスケが慌てているザクを倒し、

サクラがドスを気絶させ、ナルトがキンを攻撃した。

その際、千本を数本受けていたが、かすり傷程度だ。

音忍たちを縛り上げた後、ごそごそと荷物を漁っていたサスケが顔を上げた。

「あった。巻物だ。それも都合よく、地の書」

「良かった……これを持って塔につければ、二次試験は通過ね」

「やったってば!」

とにかく離れようというサスケの意見に従い、ナルトたちはその場を離れた。


塔に着き、巻物からイルカが口寄せされ、第二の試験の突破を告げられる。

そこで中忍の極意について聞かされた後、奥に進み、合格者達は集められた。

そして、中忍選抜試験を行う意味について、三代目から説明を受ける。

ナルトは、カカシに印話を繋ぐ。

『銀羅』

『はっ』

『いつでも三代目のお傍に駆け寄れるように、構えておけ』

緊迫感すら伝わるその声音に、カカシは気を引き締める。

『いいか、決して気配を波立てずに聞け。大蛇丸が、いる』

思わず見回しそうになったカカシは、必死に自分の動きを止める。

何とか落ち着いてから、ナルトに詳細を尋ねた。

『ど、どこに?』

『お前たちと同じ段……向かって左端、音から来た忍。そいつが大蛇丸だ』

途端、カカシは逆毛立つ。

大蛇丸の位置は、自分より三代目に近い。

『三代目に確認を取れない以上、今行動を起こすことは出来ない。

いいか、決して目を離すな、気を抜くな。抜いた瞬間、三代目が死ぬと思え』

『はっ!』

カカシは目だけで礼をし、ナルトと印話を切って、隣のアスマに印話を繋いだ。

ナルトはカカシとの印話をきった後、白に繋いだ。

『雪、そこにいるな?』

『はい。流石ですね』

ちょうど影になっていて、誰からも見えない場所に、白はいる。

ナルトは視線も向けず、言葉だけで指令を出す。

『“分かってるな?”』

含めるように、ナルトはそういった。

白はその意味を理解し、ナルトには見えないと分かっていても、その場で軽く礼をする。

『御意に』

白はずっと音の上忍を見張っていた。

そいつが、大蛇丸と入れ替わったのも見ている。

その大蛇丸が、三代目とさほど離れていない距離にいる。

いつでも飛び出せるよう武器を構え、白はじっと様子を窺っていた。

もしもの時は、その身を犠牲にしてでも、三代目を守らなければならない。


それが暗部として、煌の部下として、すべきたった一つのことだ。