二十二話


ナルトも本体が入れ替わり、予選が終わったことで、本選の説明に入った。

その説明を片手間に聞きながら、カカシはガイを見た。

愛弟子のリーが受けた宣告に、放心していた。

カカシはそのガイに、すっと近づく。

「ガイ」

「カカシ……今は放っておい」

カカシを突き放そうとしたガイの言葉を遮って、カカシは呟いた。

「リーくんの怪我、治す当てがなくもない」

それにガイはばっと振り向く。

カカシは小さく頷いた。

「俺の一存では何も出来ないけどな。

俺が暗部にいた頃、上司だった方たち……

あの伝説の三忍の一人、綱手姫に並ぶほどの医療忍術を持った医療忍者と、

時空間忍術を得意とする方がいる。あの方たちなら、リーくんの怪我も何とかなるかもしれない」

「そ、それは本当か、カカシ!」

カカシは大きく頷く。

ガイは、がしっとカカシの肩を掴んだ。

「誰だ、そいつらは!?」

「……暗部だ。詳しいことはいえない。火影様に頼みに行ってみろ。

火影様が命じたのならば、彼らは動いてくれる」

(まあ、頼みに行かなくても動いてくれる気はするんだが)

その言葉は心の中だけで呟くに留めた。

ガイは、リーの怪我が治る可能性があると聞き、俄然元気を出した。

おそらく、三代目が説明を終えた瞬間に走り出すつもりだろう。

カカシは苦笑して、説明を受けているナルトたちに目を向けた。


ナルトたちは説明を受けた後、本選のトーナメントを決めるためのくじ引きをした。

ナルトは少し考えた後、軽く三代目に目配せした。

三代目は何となくその意味を読み取り、分からない程度に頷く。

(ナル、まさか……)

その一連の行動を見ていたシカマルは、やはりため息をついた。

(結局お前もあいつも、似たもの同士なんだよな……)

ナルトは、一回戦でネジと戦うことになった。


解散となり、ナルトは零班をヒナタの病室へと集めた。

そこでナルトは、リー対我愛羅の戦いについて聞く。

「まあ、お前とヒナなら何とかなるんじゃね?」

「俺は医療には詳しくない。いの、どうだ?」

いのは聞いた戦いから、リーの怪我の具合を想像する。

「んー、そうね。多分リーさんは、経絡系を含めたあちこちの管に骨が散らばってるんだと思うわ。

確かにかなり難しい手術だけど、ヒナが白眼で骨の位置を正確に読み取り、

私が仲介してそれをナルに伝えて、ナルがそれを時空間忍術で取り除きながら、

それによって空いた穴をヒナが治療すれば……可能性は、それなりにあるわ」

「そうですか」

ほっとした様子のカカシを見、ナルトは苦笑しただけだった。

「んで、この一ヶ月、どうするんだ?」

本選までの一ヶ月。

この期間をどう使うかは、かなり重要な問題だ。

「ヒナはとりあえず回復に専念させよう。

いの、お前は時々来て、ヒナの回復を手伝ってくれ。

お前はそれ以外は通常任務の方を手伝ってくれ。忙しくなるぞ」

「了解、了解!忙しいのなんて今更よ!」

いのがガッツポーズをとって返事した。

「カカシ、お前はサスケを鍛えろ。一戦目から我愛羅だ。

……そこで何か起こりそうな、嫌な予感がする。一ヶ月で出来る限り鍛え上げろ。

そのために何かの協力が必要なら、構わず要請しろ」

「承知いたしました」

カカシは深々と礼を取る。

「アスマはカカシの分の通常任務をこなしつつ、チョウジを鍛えてくれ。

連れて行ってもいい。何かあるとすると、チョウジも分隊として戦うことになるかもしれない。

最低でも上忍レベルまで引き上げてくれ。チョウジは決して鍛錬を怠るな」

「りょーかい」

「分かりました」

アスマは敬礼をし、チョウジはカカシと同じように深々と礼をした。

「シカは、白と再不斬が集めてきた情報を元に、俺と作戦や下回しを行う。

その合間を縫って、本選対策も進めておけ。今のところ連絡はこのくらいだ。質問がある奴はいるか?」

ナルトは面々を見回す。

誰も反論はなかった。

「よし、解散だ」

面々は、与えられた任務をこなすため、散っていった。

「んじゃ、とりあえずどうする?」

護衛任務のため、去っていったいのを見送り、病室に残ったシカマルは、改めてナルトに話しかけた。

「まずは三代目に色々と報告だな。行くぞ、慧」

「御意に」

二人は変化して、病室から出て行った。

病室には、煌の結界が、残っている。


「おお、煌か。ちょうどよかった。先ほど、ガイが来ての」

執務室に行くと、三代目が待ちかねたように煌と慧を迎えた。

「どこからか……と言ってもカカシじゃろうが、お前と凛の話を聞いて、治療を申し出て来おった。

凛はどうじゃ?」

「治療は可能でしょうが、当分は安静だそうです。

ロック・リーも体力を回復する必要があるでしょう。当分治療は先送りだとお伝え下さい」

ナルトはカカシの行動に苦笑するに留めた。

カカシがガイにそれを伝えていることは分かっていた。

あえて、止めなかっただけだ。

三代目も煌の考えていることを察し、鷹揚に頷く。

「して、これからどうする」

「砂と音が何かを企んでいるのは明白です。根回し下回しをしながら、探り出して対策を講じます」

「出来るのか」

「成し遂げて見せましょう」

煌は、瞳に強い光を宿して三代目を見上げた。

「ならば、中忍選抜試験のことはお前に一任する。必要なものがあれば言うがいい」

「御意に」

煌と慧が立ち去ろうとして、三代目は少し待つようにと声をかけた。

「くじ、時空間忍術を使ったな?彼女の敵討ちか?」

その声には少しの興味が含まれている。

煌は首を振り、小さく笑った。

「彼女はそのようなことは望んでおりません。私には、私なりの、戦う理由が、あります」

煌は礼をして、慧を伴い退室した。

三代目は、キセルから煙を吹く。


「日向の運命を断ち切れるか?ほ、少し面白い試合になりそうじゃ」