どくり、とナルトの中の血が波打った。

(九奈)

『いや、まだ完全には出てこまい。だが、目覚めかけている』

ナルトが身構える。

我愛羅の砂が崩れると、負傷した我愛羅が現れた。

その瞬間、試合会場全体に白い羽が舞った。

幻術の白い羽が。

会場の殆どの人間は眠りに落ち、崩れ落ちる。

中忍以上の忍、幻術を学んだ下忍だけが、その幻術を跳ね返した。

『零班、行け!』

試合会場にいた零班、零班分隊の面々に煌から号令が入り、一斉に飛び出した。

その際、何人かは自分の座っていた席に影分身を残していく。

次々と忍たちが動き、試合会場は騒然となる。

その際、三代目は風影もとい大蛇丸に連れられ、試合会場の屋根へと飛んだ。

その二人の周りに、音忍の四人が結界を張る。

他の音忍たちも次々動き出し、会場にいた忍たちと対峙した。

頭を抱える我愛羅は、テマリとカンクロウにつれられて、試合会場を出て行く。

ゲンマに言われ、サスケはそれを追いかけていった。

それに気付いたカカシは、困惑しているサクラに襲い掛かった忍たちを消していく。

少しだけ敵の攻撃が落ち着いた時に、背にいるサクラに声をかけた。

「幻術を解いてナルトとシカマルを起こせ!久々の任務だ……」

「ど……どんな任務……?」

「心してかかれよ。波の国以来のAランク任務だ!!」

驚くサクラに、カカシはナルトとシカマルと、

自分の忍犬のパックンと共に、砂の三人を追ったサスケを追う様に命じる。

サクラは言われたとおりに、ナルトの幻術を解く。

それから、シカマルの幻術も解こうとしたのだが。

「シカマル……アンタ、初めから……!」

すると、パックンがシカマルに噛み付いた。

「いってー!!」

シカマルが叫びながら飛び起きる。

「幻術返しアンタも出来たのね!なんで寝たフリなんかしてんのよ!」

サクラが怒ったが、シカマルはめんどうだから、と言い掛けて、またパックンに噛まれた。

「な……何だってばよ?これ!?」

ナルトは表面上は困惑していたが、シカマルはその内面の表情までしっかりと読み取った。

『ナル、笑ってるだろ』

『さて、な』

ナルトははぐらかしながらも、自分の背後に迫っていた音忍を攻撃したガイを見やる。

そして、その後カカシが三人と一匹に指示を出し、

ナルトは、表面上は訳が分からないままサクラとシカマルとパックンと共に飛び出した。

『凛、こっちは頼んだ!』

『はい!』

その際、一言だけ、凛に残していく。

下忍の速度で遠ざかっていくナルトを感じながら、凛は一つ息をついた。

(煌様に託された場……私は、全力を尽くさなくてはならない)

と、自分に迫っていた音忍を、その武器で裂く。

そして、大蛇丸と共に結界の中に閉じ込められている三代目に近づいた。

「三代目、私の声が聞こえますか?凛です」

呼びかけると、三代目が大蛇丸と相対したまま声を返してくる。

「凛か。おお、よく聞こえるぞ」

「煌様からの伝言をお伝えします。……自由に、なさるようにと」

それに驚いたのは、三代目だけではなく、大蛇丸と、辺りにいた暗部たちもであった。

「凛様、どういうことですか!?」

「煌様は、三代目の憂いを晴らしたいと仰いました。

どうぞ、積年の後悔を……晴らして下さい」

暗部たちは黙って凛を見る。

三代目はしばらく黙った後、穏やかに微笑んだ。

「ありがとう、凛。感謝する」

「勿体無いお言葉……」

凛はそれだけ言うと、一歩下がって周りの暗部たちに顔を向ける。

「これは煌様が考えた末の結論よ。

それを邪魔するというのなら、私が許さないけど、どうするの?」

暗部たちがややざわめく。

互いに見交わした後、凛の周りに跪いた。

「我らは煌様と共に在る、と誓いました。

煌様がそう考えたのならば、何か深い思慮があってのことと、愚考します。従いましょう」

凛はそれを満足そうに見やって、指示を出す。

「私達の務めは、里を、里の誇りを守ること。

昨夜煌様に言われたことは覚えてるわね?……行きなさい」

凛が言うと、一斉に暗部たちは散っていった。

二人ほど会場に残り、上忍たちに加勢し、他は里中へと散っていく。

それから、凛は会場を飛び回っている影に声をかける。

「玲!ここは私が持つわ。あなたは外に出て、指示を。後で慧も合流するはずだから」

「御意!」

すると、すぐに返事が聞こえて、影は一つ試合会場の外へと飛び出していった。

その凛の周りに、また音忍と、そして砂忍が集まる。

「暗部第零班……凛。参るわ」
凛の武器が、煌いた。


「煌……確か新しい木の葉の暗部の総隊長の名だったわね」

「おお、確かお前に会ったと言っておったな」

「何者かしら?」

どうやら煌を警戒しているらしい大蛇丸に、三代目が不敵に笑う。

「何、他の忍達と変わらぬよ」

「……」

「木の葉の、誇り高き忍だ」


三代目は、忍装束となり、構えた。