三人と一匹は、サスケを追いかけて森を走っていた。

途中、カカシが口寄せしたパックンが鼻をひくつかせる。

「おい、お前ら、もっとスピードを上げろ!」

どうしたのかと尋ねるサクラに、パックンが、追っ手が計九人来ていると答える。

「チィ!くそ!おそらく中忍以上の奴ばっかだ……追いつかれたら全滅だぜ!」

「くっそー!こうなったら待ち伏せてやっちまうか!?」

『確かに九人だな。カカシの忍犬は本当に優秀だよな』

『俺もそのうち何かと口寄せ契約すっかね』

会話に重ねて印話を行う。

表面上は、ナルトとサクラに待ち伏せとはどういうものかについて述べるシカマルだった

が、意識を少しだけ背後に向けた。

『ナル、お前は先行くんだろ?

後ろのあいつらと、里は引き受けとくから、思いっきりやって来い』

『シカ……』

『俺も、お前に後悔なんてして欲しくねーからよ』

『……ありがとう』

その礼に様々な思いがこもっているのを感じながら、シカマルは先に行くよう促す。

「後で追いつくからよ……とっとと行け!」

シカマルを残して、二人と一匹は先に進む。


枝で犬の足跡を偽造し、ナルトたちが進んだ方向を敵に誤認させる。

そして影真似で追っていた八人を捕まえた。

そのあっけなさに、思わずため息を吐き出す。

「こんなの、下忍でも捕まえられるぜ……大蛇丸も随分杜撰な追っ手を選んだもんだ」

「貴様、大蛇丸様を愚弄するか!」

「愚弄するも何も、俺はあんな奴についていこうとするあんたらの頭が理解できねえよ」

「ガキが何を!」

「おい、こいつの首を刎ねてしまえ!」

と、音忍の一人が叫んだ途端、シカマルの後ろに、音忍の一人が飛び降りる。

しかし、降り立つ直前に、音忍は動きを止めた。

シカマルの背中側に伸びた影によって縛り付けられている。

「……っ!?」

そしてそのまま、シカマルの影へと呑み込まれていった。

「おい、お前、何をした!」

「あいつは、大蛇丸とは違う……」

シカマルは音忍の問いには答えず、次々と音忍を影に呑み込ませていく。

「何つーかよ、あいつは、守りたいと、力になりたいと……

そう人に思わせる何かを持ってんだ。

大蛇丸みたいに力とかそういうもんをちらつかせなくても……

ただその生き様が人を惹きつける」

音もなく、音忍は影に沈み込んだ。

「尊敬っつーのか、憧れっつーのかよく分からねーけど、

俺は、俺たちはあいつの願いを叶えてやりてえ。そのために“俺たち”はいるんだからな」

最後の言葉と同時に、シカマルは慧の姿に変化し、仮面をつけた。

一度だけ、ナルトがいるだろう方向に目をやる。

当然だが、とうにその姿はないし、気配も大分遠い。

シカマルはその方角をしばらく眺めた後、体をほぐして気を引き締める。

「さて、行くか」


そして、そこには誰もいなくなった。