ほう、そこまでいうのならば、一つ賭けをしようか。

そう力むんじゃない、何、単純明快だよ。

私を見つけてご覧。

私は逃げも隠れもしないから。

ただ、化けるだけさ。

そう。

まあそれだけじゃあんまりだろうから、二つ、ハンデをやろう。

一つ、私はこの学園内にいる。

二つ、賭けの間は、ころころ顔は変えない。

最初の一人の姿のままでいると約束しよう。

む、私は約束は守るほうだぞ。

本当だ。

この顔に誓おう。

……はは、尤もだ。

さて、説明を続けよう。

時間制限は……そうだな、夕食の鐘が鳴るまでだ。

それまでに私を見つけることが出来たのならば、先ほどの言葉は訂正しよう。

だが見つけることが出来なかった、もしくは諦めた時は、

それ相応の報復を受けて貰うぞ。

どうだ、やるか?

……言ったな。

今更取り消しはできないぞ。

いい度胸だ。

では、私は行く。

十数えたら探しにおいで。




おや、どうしたんだい、そんなに息を切らして。

うん?

……あの変装名人と、賭け?

見つけられるかどうか?

何でまたそんな賭けを?

確かに、君の言うとおり、あの人は誰にでも化けられるだろうが……。

……あー、そうか。

分かった、手伝おう。

礼は要らないよ。

さあ、時間がないよ、急ごう。

まずはどこから行く?


長屋にも、教室にも、いなかったな。

次はどこに行く?

うん?

私の意見か?

うーん、そうだな……。

図書室はどうだろう。

あそこには、ほら。

ああ、そうだよ。

じゃあ行ってみようか。


いなかったなあ。

ああ、残念だ。

何が?

……そういえば、どことなく、笑みを浮かべていたような。

でも、それはいつものことじゃないか?

そうだよ。

しかし、困ったな。

次はどこを探そうか。

え?学園長室?

ああ、学級委員だからか。

なるほどな。


どうする、そろそろ時間がないぞ。

……そうだな、手分けしようか。

君はどこへ行く?

分かった、それでは私は菜園に向かうよ。

集合場所は、鐘のところにしよう。

ああ、それじゃ後でな。


おーい、ここだ、ここ!

どうだった?

……そうか、私の方も、収穫はなしだ。

困ったな、このままでは時間になってしまうぞ。

ああ、そういえば、賭けに負けた場合は、どうなるんだ?

……それは、恐ろしいな。

何がくるか分からないぞ。

そうだな。

……降参するのか?

本当にいいのか?

それは、そうだが……。

…………。

……分かった。

ううむ、もう少し、粘ると、思ったんだが。

いやしかし、雷蔵たちが言いやしないかと冷や冷やしたな。

全く、忍ならそう簡単に感情を動かされてはいけないだろう。

私のように。

うん?

何だ、その顔は?

だって、君が言ったんじゃないか。

私に、化けられぬ者などいないと。


さあて、お仕置きの時間だ。



Who are you?
(後ろの正面、だーあれ)