ん、次はぼくか。

ぼくは最初から記憶があったんだよ。

そう、生まれた時から。

目が覚めたら、白い部屋……今思えば病院のそういうところなんだけど、

で、見知らぬ人がたくさんいて、体がろくに動かなくて……

忍的にまずい状況か、と思ったんだけど、すぐに母さんが目に入ってね。

それからようやく、自分が赤ん坊なんだって分かったんだ。

どんな気分かって?

夢でも見てるのかって思ったよ。

だって、ぼくは記憶の中では、ついさっきまで普通の忍だったんだもん。

分かってるよ、その話は後だよね。

でもまあ、夢ではないと分かって、じゃあ何なんだって。

しばらく様子を見てたらどうもおかしいぞって。

見たこともないものがずらりと並んでるんだもの。

服だって昔とは違ったしね。

それでどこかで、カレンダーを見つけて、

ああ、これって日付を表してるんだなって思ったら、あとは早かった。

そのカレンダーは、今があの時から四百年ほど先に進んだ世界だってことを示してたからね。

輪廻や転生なのかとか思ったけど、考えても仕方ないからやめた。

そんなことよりも面白そうなものがそこら中に転がってるんだから。

もちろん、おもちゃ含む電子機器とかだよ。

どういう仕組みで動いているのか気になって気になって。

それでさ、ぼくの家、家電品の販売店なんだよ。

裏口から入ったからわかんなかった?

友達がいっぱい来てるってのは言ってきたよ。

うん、幾つかのメーカーのを販売してる……小売って言うんだっけ。

それでさ、古くなって使えなくなったやつが欲しいって言ったら、くれたんだ。

頼んでみるもんだね。

それからはもうひたすら分解分解さ。

いやいや、創造の前には分解がつきものだよ。

なあ、三治郎。

でも、昔はなかった技術がふんだんに盛り込まれてるもんだから、

それがどういう理論で成り立ってるのか、もう気になって仕方なくなって。

父さんに聞いたり、図書館に行って調べたり。

今では、材料さえあれば、ある程度のものは作れる様になった。

もちろん、これからも研究を重ねるつもりだよ。

そのうち、からくりと複合したものを作りたいと思ってる。

ありがとう、三治郎。

その時は手伝ってくれな。

もちろん!

ん?将来の話?

もちろん工学に行くつもりだよ。

どこかまでは決めてないけど。

まあ、つまらないとこには行きたくないな。

そう、学園に来たのは、ぼくも同じで学園から手紙が来たからさ。

ぼくはようやくそこで、みんなもいるのかもしれないって思ったよ。

悪かったって。

ほんとに、ずーっと電子機器の研究に夢中だったんだから。

後は両親に頼めばそれで終わり。

晴れて学園の一員になりましたとさ。

めでたしめでたし。

めでたいだろ?

みんなと会えたんだから。

ぼくもこんなところかな。

次は伊助だね、はい、バトンタッチ。

あ、その前にお茶のお代わり淹れるわ。

ちょっと待ってて。