あ、ありがとう兵太夫。 このお茶美味しいね。 後でメーカーを教えてね。 そうそう、ぼくの番か。 ぼくはね、ゆっくり記憶を思い出して行ったんだ。 幾つだったかな。 三つくらいから夢に見始めたんだよ。 昔のことを、断片的に。 最初に見た時に、“昔の”ぼくの意識が急に戻って来て……そうだね、虎若に近いかも。 でも、その時は、“昔の”記憶が大分薄くって、ボケた気分だったな。 あ、笑わないでよ団蔵。 それからどんどん夢で見て、思い出して行って……ああ、ぼくは何でここにいるんだろうって。 今がどういう時代かも分かっていたから、混乱はしなかったけど。 ひたすら、何でだろうって、そればかり考えてたかな。 でも、そのうちそればっかりじゃいけないな、と思って、家の手伝いをしてたよ。 ぼくの家はクリーニング店なんだ。 学校にも歩いて行けるし、ここからもそう遠くないよ。 どうしたの、庄ちゃん。 え、らしいって? ぼくもそう思うよ。 そう考えると、今に生まれてきたのって、何か理由があるのかもね。 難しいって? じゃあその話も後ね。 もともときれいにしたりするのが好きだからね。 今の仕事も結構楽しいよ。 たまあに、染物もやってる。 大半は趣味だけど、たまに教えて欲しいって人が来るよ。 うん、ぼくも驚いた。 それで、ぼくにも同じように、学園からお手紙さ。 みんなのことを気にかけてはいたんだよ。 クリーニングの常連さんに、それとなく聞いてみたり。 お手紙を受け取ったら、すぐに父さんと母さんに頼み込んで、行かせてもらったんだ。 ぼくも、今までのことはそんなところだよ。 将来は……まだぼんやりとだけど、やっぱり服関係の職業に就きたいなあ。 今のクリーニングも良いけど、もっと多くの人の役に立ちたいって思ってる。 止めろよ、照れるなあ。 服飾? 何それ。 ……いいかも、それ。 今度調べてみるよ。 ぼくの話はこんなところだよ。 じゃあ、次に回そうか。 ええと、三治郎の番だね。