喜三太、頼むから……部屋の外にナメクジ出さないでくれよ。 ほんとに。 うう、伊助、ありがとう。 ん、そう。 俺も寮なんだよ。 家が遠くてさ。 そう、昔の家があった辺りなんだ。 本当に子孫だったりしてな。 まあ、とにかく俺の話だ。 俺の家には、道場があるんだ。 ああ、俺も驚いたよ。 何世代か前は門戸を開いていたらしいが、 今ではそれほど剣術は主流ではないから、閉めてしまったらしい。 父上は学校の先生をやっている。 高校の先生で、剣道部の顧問なんだ。 だから、たまにそこの剣道部の部員が、練習をしにうちの道場にやってくるんだ。 もちろんだ。 父上や、そこの部員たちと、時たま手合わせをしていた。 そこでだ。 昔のことを、体が覚えていたのかもしれない。 自然と、体が動くんだ。 体自体は違うのにな。 感覚ってやつかもしれない。 まあとにかく、自分でも不思議なくらいに、体が反応する。 父上なんて、神童だとか何とか言っていたもんさ。 俺自身にも、なぜかそんな風に打ち合っていた記憶があって…… それを辿っているうちに、記憶を思い出したんだ。 そう、最初は覚えていなかった……多分。 俺はどちらかというと、今の俺に、昔のおれの記憶が流れ込んできた感じだったな。 うん? 大体、八つのころだけど。 ……そうなのかな。 うーん、確かに、昔のおれの記憶が、今の俺に影響はしてるんだろうな。 どっちの記憶が強いかって? よく分からないが、俺は俺だよ。 それでいいだろ。 まあ、話を戻すと、そういうわけで昔から剣術をやっていた。 やりながら思い出していた、の方が正しいかもしれない。 今は年齢的に筋力や身長が足りないものの、それでも父上や部員の者に負けたことは無い。 ……一応、勝たないようにもしている。 さすがにあまりやりすぎると、不自然だと思って。 ……不吉なこと言うなよ、庄左。 とにかくだ。 父上が、学園の剣道部顧問……戸田先生と知り合いで、そこを勧めてくれたんだ。 知ってたか? まあ、そうかもしれないが。 その後今の戸田先生に初めて会ったんだけど、全く変わってなくて驚いたよ。 先生が俺のことを覚えていなかったのは、ちょっとショックだったけど。 戸田先生から、ちらほら聞き覚えのある名前を聞いて…… もしかしたら、自分と同じように生まれ変わった……っていうのか。 そういう人がいるのかもしれない、と思って、学園に来たんだ。 まあ、大方当たってたみたいだな。 もちろん、俺もみんなに会えてよかったと思うよ。 将来? うーん、やっぱり剣道の道に行ってみたいな。 やっぱり、剣術が好きなんだよ。 とりあえず、体育科を目指そうかな。 そこから先は、もう少し考えてから決める。 こんなとこか。 改めて話してみると、不思議なもんだ。 学園には、元学園の者が集まる運命なのかな……? ああ、そうだな、次に回さないと。 じゃあ、次は団蔵だな。