オレの話は、みんな気になってるだろ?

ま、とりあえず記憶の話からな。

オレは最初から記憶があったんだよ。

そりゃあ驚いたさ。

死んだはずの母さんが目の前にいるんだから。

……変に気ぃ使うなよ。

今更だろ。

その時点でありえないことって分かったからさ、あとは理解が早かったな。

既にありえないことが起きてんだから、一度死んで生まれ変わったってこともありえなくもないだろ?

分かってるって。

変な気分だったなあ。

オレ、今の年には、もう母さんも父さんも、兄弟たちも死んでたんだから。

兄弟?

いるよ。

兄貴が一人と姉貴が二人。

おっと、これ以上は聞かないでくれよ。

追加料金いるから。

ははは、冗談はさておき。

オレはけっこう積極的に、お前らというか、他に同じような体験をしてそうな人を探してたんだよ。

でも、全然見つからなくてさ。

その時に……土井先生に会ったんだよ。

おお、驚け驚け。

オレ、土井先生と従兄弟になってんだよ。

オレも驚いたもん。

先生が覚えてないってことにも驚いたけどね。

最初会った時、土井先生って呼びそうになって、ほんとに焦ったんだぜ。

その時土井先生はまだ先生じゃなかったし。

そう、その後何年かして、先生は先生になったんだよ。

で、その就職先を聞いてさ、何か引っかかって……

調べてみりゃ、学園長先生の名前があるじゃんってな。

もちろん、そこに行きたいって言ったのさ。

オレの家はこの辺じゃなくてさ、隣県なんだよ。

だから、寮に入るつもりだったんだけど……土井先生がオレの面倒を見るって言ってくれてさ。

うん、やっぱ土井先生は土井先生だよな。

こうしてきりちゃんは、図らずも昔と同じような生活をすることになりました、と。

先生はアパート暮らしでさ、オレもそこで暮らしてるから。

バカいうな、さすがにイナゴばっかにはしないよ。

一応お金は父さんたちが出してくれてるからな。

そりゃ、なるべく費用は抑えるつもりだけど。

そうそう、三つ子の魂百までってな。

ん、どうしたしんべヱ。

ご飯のこと聞いたらおなかすいたって?

……おおお。

お菓子が山のように出てきた。

お前のかばんは四次元ポケットか。

まあ、貰っておくよ。

もぐもぐもぐ……ん?

ああ、言い忘れてた。

父さんは、銀行で働いてるんだよ。

母さんは普通に主婦。

オレは……具体的な職業は決めてないけど、経済学部に行きたいなって思ってる。

やっぱ金好きだもん、オレ。

なんだよ、みんな、その顔は。

変わってないことに喜べよ。

……なんだか釈然としないなあ。

まあいいか。

ほれ、次。

喜三太だろ。