それじゃあ、ぼくの話をするね。 ぼくは寺の子として生まれたんだ。 つまり、“そういうもの”を祓ったりする家系なんだ。 え、変わってないじゃないかって? そうだね、ぼくも驚いた。 今でもよく視えるよ。 ほら、乱太郎の肩にひとり……。 ふふ、冗談だよ、そんなに驚かないで。 本当だったら、笑い事じゃないんだから。 ん? みんな、どうしたの? そう? じゃあ、続けるけど。 ぼくも最初は記憶がなかったんだ。 いくつだったかな、ちょうど彼らが視えるようになった頃…… 五つくらいの時に、少しずつ思い出してきてね。 最初は穴だらけだったんだけど、八つを数えるくらいの時には、大体思い出したよ。 うん、本当に驚いた。 自分の身に何が起こったんだろうって思ったもの。 あ、うん。 “今の”ぼくとしてじゃなくて、“昔の”ぼくとしてだよ。 いや、そういうことじゃないと思う。 ぼくは、記憶喪失だったのが、失っていた記憶を取り戻したんだって解釈してる。 “今の”ぼくが“昔の”ぼくに塗り替えられたわけじゃないと思うよ。 ……少なくとも、ぼくは。 そうだね、確かにややこしいね。 ええと、どこまで話したっけ。 そうそう、それで思い出したら、今度は、みんなもどこかにいるんじゃないかって思ったんだ。 そんな時に、うちにも同じように学園から勧誘の手紙が来ててね。 そう、そこで学園長先生の名前を見つけて、すぐに行きたいって両親に話したんだ。 うちの親は、ぼくには寺の仕事を継いで貰いたい以外は何も強制する気がなかったみたいで、 すぐに了承をくれたよ。 それで、学園に入学したんだ。 ちょっと遠いけど、寺から通ってるよ。 電車を使ってるんだ。 うん、初めてみた時はびっくりしたよ。 鉄の塊が走ってるんだものね。 ……え、そうなの? 兵ちゃん、後で詳しく聞かせてね。 ぼくの身の上はこれくらいかな? そう? ならいいけど。 さて、次はきり丸の番だね。