説得力ないよ、団蔵。

さて、僕の番か。

僕も生まれた時から記憶があったよ。

取り出してくれた医者の顔まで覚えてる。

意識がはっきりとしていたから、最初はとても困った。

ここがどこで、目の前にいるのが誰で、

今自分がどうなっているのかがさっぱり分からなかったわけだから。

しばらくして、どうやら自分は赤ん坊らしい、と気付いて、とりあえず落ち着いたよ。

え、相変わらずだって?

そうかな、随分驚いたんだよ。

ひどいな。

それからしばらく赤ん坊らしく振舞って、周りの情報を集めたんだ。

お母さんとお父さんが全く同じ以外は、まるで別の環境だったからね。

いつだったか、日付を見て、ここはあの時から四百年も経っていると知って、

何の因果か分からないけれど、不思議なこともあるものだなあって。

なんだいみんな、その顔は。

……なんだか釈然としないけど、話を続けるよ。

それでこれからどうするか、と思って、とりあえずは普通に生活しようと思ってね。

普通に生活していたよ。

子供らしくね。

だからなんだい、みんな。

言いたいことがあったら遠慮なく言ってくれ。

うん?

……そうかい?

僕は普通のつもりなのだけれど。

ああ、そうだね伊助、話を進めようか。

まあせっかく珍しい体験をしたんだから、できることはやろうと思って、

色々頑張っていたよ。

勉強はもちろん、部活もやってみたし、習字や水泳、そろばんとか。

もちろん、習字というか墨と筆は昔散々使っていたから、すぐに出来たよ。

ピアノにもチャレンジしようと思ったんだけど、あれだけは無理だった。

何と言うか、とにかく無理。

合わないみたいなんだ。

まあ、とりあえずピアノ以外は色々ね。

それで、僕のところにも学園から手紙が来たのさ。

後は大体みんなと同じだよ。

学園は色々なものを学べることで有名だったし、両親も賛成だったさ。

そうそう、僕のお父さんはゴミ処理工場で働いているんだ。

そう、燃やしているんだよ。

炭を作るのと共通点を感じるよね。

まあ、その辺は後で検討しよう。

将来ははっきりとは決めていないけど、文学とか……人文科に興味があってね。

そちらの方向に進みたいと思っている。

とりあえずしばらくは勉強しながら視野を広げたいな。

……それは、尊敬してくれているのか、それとも呆れているのかどっちだい?

まあいいや。


じゃあ次はしんべヱだね。