一番手って、なんだか緊張するな。 分かってるよ、でも、何となく、その……照れるだろ。 茶化すなよ、団蔵。 何から話せばいいんだろう? うん? 記憶について? 分かった、ありがとう、庄左ヱ門。 生まれたてのときのことはよく覚えてない。 多分、最初は記憶がなかったってことなんだろうな。 今の意識があったなら、覚えてただろうし。 オレがはっきりと思い出せるのは、記憶を思い出してからなんだ。 その時から、物事の記憶をし始めたってことになるんだと思う。 思い出したときのことはよく覚えてるぞ。 オレの父さんはな、昔と全然変わらなくて、射撃の名手なんだ。 もちろん、銃じゃない。 今は火縄銃でもないし、そもそも法律で……何て法律だったっけか。 そうそう、それそれ。 さすが庄左ヱ門。 だから、弓矢なんだ。 そう、こう構えて、バシュッと放つ。 銃も良かったけど、弓矢もいいぞ。 あの時は特に何も思わなかったけど。 時代の変化ってやつかな。 ああ、そうそう、そうだった。 それで、父さんが小さくて安全な弓をオレに作ってくれて、やり方を教えてくれたんだ。 遠く離れた的に撃つってことが、昔と共通してたからかな。 その時に、昔、父さんに火縄銃の撃ち方を教えて貰った時のことを思い出したんだ。 そりゃあ驚いたよ。 父さんの姿はまったく変わらず、オレの手には弓。 そう、そこで初めて色んなものを認識してな。 でも、どっちかって言うと、あの時代のオレの中に、 今の状況の情報……世界のこととか、今の父さんと母さんのこととか、弓矢を教えて貰っていたとか、 そんな情報がいっぺんに流れ込んできた感じ。 記憶を思い出した瞬間に目が覚めた、とでも言えばいいのかな。 難しいな。 とにかくそんな感じ。 最初は混乱したけど、今が、あの時から何百年も経ってる時間だってわかって、逆に落ち着いたよ。 何で、今オレがここにいるのかは分からないけど、オレは今生きてるんだって。 そう思ったら、なんだか開き直ってさ。 せっかく生きてるんだから、生きてみようと思って。 いいじゃないか。 前向きっていいことだろう? それで、その前向き思考で考えたら、他にも同じ状況の者が…… どこかにみんながいるんじゃないかって思って。 そんな時だよ。 学園から勧誘の手紙が来たのは。 ……え、みんなにも来たって? そうそう、しかも、その校長が学園長先生なんだもんね。 ここに行けば、きっとみんなに会えると思った。 殆ど直感のようなものだったけれど、あの頃はその直感に何度も命を救われているしな。 そうだね、ややこしくなるから、その話は後にした方がいいか。 まあ、親に頼んで行かせてもらった時には、本当に会えるとは思っていなかったんだけど。 あ、叩くなよ、団蔵! 今までの経歴はこんなところか。 家? ここからそう遠くないよ。 学園には歩いて通ってる。 ああ、後でみんなで住所録作ろう。 将来? もちろん考えてるよ。 今時、忍なんて職ないだろうし。 弓術が意外と楽しくって、それで食べていけたらいいなあ、と思ってる。 難しいかもな。 でも、他に何かの職でお金を稼ぐにしても、弓はやめるつもりはないよ。 そうだな、昔は火縄銃で、今は弓。 オレに合ってる気がしないか? だろ? ああ、そろそろ回さないと十一人終わんないな。 じゃあ、オレの話はここまで。 次は……兵太夫の番か。