「待ってよ、二人とも、戻ろうよ」 「もうちょっと!あと少しみたいなんだ」 森の中で、三人はがさがさと道無き道を歩いていた。 はぐれないようにその手を繋いでいる。 二人を手伝って、材料を探している時に、喜三太がふと、顔を上げたのだ。 何か、音がしないか、と。 喜三太がその音がするらしい方に歩いて行き、それをしんべヱが追いかけ、平太が二人を追いかけたのだ。 もはや留三郎たちの声が聞こえないぐらいに離れていて、平太が身を震わせる。 こんな森の中で迷子になったら、合流どころか森から出られるかどうかも怪しい。 だから先ほどからしきりに戻るように促しているのだが、 喜三太は聞こえてくる音が気になって、どんどん突き進んでいた。 そのまましばらく歩いて、喜三太以外の二人にも、その音が聞こえてきた。 リン、と、鈴のような音が。 「ねえ、これ、あのおばあさんが言ってたお花があるんじゃない?」 「ほんとだ、鈴みたい」 「きれいな音……」 思わず、しんべヱと平太も聞きほれた。 そうしてあたりを見回してみれば、見たことのない花が咲いている。 よくよく耳を澄ませば、音はその花からしているようだった。 「あ、これだ!」 「本当に、お花が鳴ってる!」 「何でなんだろう?」 三人は、咲いている花をじっと見つめる。 だが、花のどこにそんな音を鳴らす組織があるのかは、分からなかった。 まるで、花の中から鳴っているようだった。 三人はしばらくその音を聞いていたが、平太はハッとして立ち上がった。 「早く戻ろうよ。あのおばあさんも気をつけてって言ってたし、きっと長くいない方がいいよ」 「そうだねー」 「そろそろ戻らないと、先輩達、心配するね」 二人が頷いてくれたことに、平太はホッとした。 「一本、持って帰ろうか?先輩達に」 この花の音、聞かせてあげたいし、と喜三太が言った。 少し考えてしんべヱが首を振った。 「止めておこうよ。何となく、その方がいい気がする」 「そう?」 「うん」 「じゃあ止めておこっか」 喜三太もすんなり頷いて、三人は元来た道を戻るべく、歩き出した。