「ふあ、あ……おはよう、三治郎」 「おはよう、乱太郎」 夜が明け、空が大分白んだ頃、二人は木々の間から起き上がって伸びをした。 天気は快晴、風も強くない。 良い天気だと笑って、二人は軽く土を払ってから川へ出た。 そこの川の水で二人は顔を洗う。 適当に水を切って、もう一度火を起こして、昨日の残りを食べた。 「それで、これからどうしようか、三治郎」 もちろん、とりあえずの目的は仲間を探すこと。 「うーん、あの笹船が見つかってないとすると……川下にはいないのかも。川上に上ってみようか」 三治郎はそう言いながら川下に目をやって、それからそのまま固まった。 不思議に思いながら、乱太郎もそちらに目をやる。 そして同じように固まった。 「おおーい!」 「乱太郎、三治郎!」 「わあい、仲間、見つけた!」 川下の方から、三つの人影が走ってきた。 「団蔵、伊助、喜三太!」 乱太郎が思わず声を上げる。 三治郎も、伊助の手にあるものを見て、声を上げた。 「あ!」 昨日川へ流した、笹船だった。 それから話を聞いたところ、団蔵たちも、 この川の、乱太郎たちよりも下流のところで野営をしていたらしい。 だが、川についた時にはすっかり暗くなっていたため、川の隅に引っかかっていた、 笹船に気付かなかったのだ。 夜が明け、明るくなったところでそれを見つけ、 乗せられていた葉っぱがは組を指しているのではないかと伊助が考え、 急いで川上に上ってきた、ということだった。 「正にそうだよ。良かったあ、分かってくれて」 ほっとしたように三治郎が笑う。 今は、五人で乱太郎たちの焚き火を囲んで座っていた。 「朝、目を覚ましてこれを見つけた時はびっくりしたよ。まだいてよかった」 伊助もつられて笑う。 「乱太郎と、三治郎だけ?他のみんなは?」 辺りを見回しながら言った団蔵に、二人は首を振る。 はぐれたまま、ということだ。 「じゃあ、今のところ合流できてるのはこの五人だね」 「早く他のみんなを探さなくちゃ」 「どこを探そうか?」 団蔵の、当たり前の質問に、五人は声を唸らせる。 何せ、ここ近辺はそれぞれ探し回った後なのだ。 そこで、乱太郎が閃いたように顔を上げる。 「木の上に登って探してみるのは?何か見えるかも……」 「お、賛成。ダメもとで登ってみようぜ」 それから話し合った結果、三治郎が登ることになった。 するすると要領よく登り、三治郎はまだ木の枝が太い辺りから、森を眺め見る。 やはり思っていたよりも大分森は広く深く、大分遠いところまで森が広がっていた。 ということは、自分達も相当奥に入ってきてしまっているということである。 三治郎はそこまで考えてから、目を凝らして見渡す。 ある一点で、おや、と見渡すのを止めた。 「三治郎ー、何かあったー?」 下から伊助の声がする。 「煙が上がってる!あっちの方向!」 三治郎はその方向を指す。 細々とした煙が、少し離れたところから上がっていた。 焚き火のような、煙が。 間違いないことを確認してから、同じように要領よく木を下りた。 「他の誰かかも」 「ぼくたちが追ってきた野盗って可能性もあるよ」 「ええ!?」 喜三太が不安そうにナメ壺を抱きしめる。 その喜三太を乱太郎が励ます。 「行ってみなきゃわかんないよ。どちらにしろ、近づけば声ぐらいは聞こえるはず。 もし野盗だったら……」 「隙を見て捕まえるか、無理そうだったら一旦退いて、みんなを探そう」 伊助が乱太郎の後を引き取って、まとめる。 了承の意で頷きあって、野営の跡を片付けてから、五人は煙の上がっていた方向へ向かった。