目を覚まし、軽く朝食をとったところで、きり丸たち三人は唸っていた。 つまり、これからどうするかということだ。 「のろし代わりに火を焚くか?」 「でも、この森の中じゃ、見つけにくいんじゃないか?」 やや背の高い木の多いこの森の中では、空に上っていく煙は見つけづらい。 自分達は、背の低い子供であるからなおさらだ。 「じゃあ、やっぱりしらみつぶしに探すしかないのか?」 「でも、昨日回って思ったけど……この森、相当広いぞ。 何か効率の良い方法を考えた方が……」 きり丸が言いかけて、口をつぐんだ。 どうしたんだと尋ねようとする二人を制して、きり丸は耳を澄ませるように目をつぶる。 それから急に、目を見開いた。 「もしかしたら……っ!行くぞ、兵太夫、虎若!」 急に立ち上がって走り出したきり丸を、二人が慌てて追いかける。 「おい、どうしたんだよ、きり丸!」 「待てよ!」 「声がした!」 背から届いた二人の声に、きり丸は簡潔に答えた。 その時は二人は首を傾げたものの、走るにつれ、その顔には笑顔が浮かんだ。 「この声!」 「間違いない!」 互いに顔を見合わせて、頷きあう。 それから、すぐに。 「抜けないよう、庄左ヱ門」 「壊す?」 「いや、ちょっと待って金吾。これ……からく……り……」 庄左ヱ門の言葉は、消えていった。 そしてある一点を凝視したまま、止まる。 しんべヱと金吾は不思議に思い、庄左ヱ門と同じ方向に目を見やった。 すると、二人の視界にも、見慣れた影が三つ、入る。 「やっぱり!」 「しんべヱ、金吾、庄左ヱ門!」 「あっちゃあ、敵より先に味方にかかったか」 仲間の姿を確認して、三人も声を上げた。 「きり丸ぅ!」 「虎若に兵太夫……やっぱりこれ、兵太夫のからくりか」 「庄左ヱ門、もうちょっと驚けよ」 虎若は苦笑しながら、それから、お前の冷静さが怖いよ、と続けた。 やってきた兵太夫に、しんべヱの足を捕らえていたからくりを外して貰う。 「いやあ、悪い悪い。 大型獣兼不審者対策に仕掛けてたんだけど……真っ先に仲間にかかるとは」 「兵太夫、悪びれてるように見えない」 虎若がややじと目で兵太夫を睨む。 「とりあえず合流できたからいいんじゃね?」 その当の兵太夫が、からからと笑った。 それからようやく本題に入った。 「そうか、そっちも三人だけなんだな」 「ああ、ちょうど近くにいたみたいで」 「後は乱太郎、伊助、団蔵、喜三太、三治郎の五人か」 互いに、仲間らしき者も、追いかけてきた野盗も見かけてない、と情報を交換しあう。 もちろん結論は、まず他の五人を探すことだ。 と言ってもあてがないので、とりあえず庄左ヱ門の当初の目標だった、川を目指すことにする。 「そういや、そっち、昨日の食事どうした?」 兵太夫が先頭に立って、辺りのからくりを避ける道筋を選ぶ。 その途中、兵太夫が嫌そうな顔をして後方を振り返った。 質問には、庄左ヱ門が答える。 「食用の植物について、いくらか図書室の本で見たことあったから、 その記憶を元に色々採ってたよ。 それが本当に毒持ってないかどうかは、しんべヱが判断できるし」 その答えに、兵太夫が至極悔しそうな顔をした。 「っだよ、普通に食事してんじゃん!こっちなんかなあ、虫とか虫とか虫とか」 三人が一斉にきり丸を見る。 きり丸はやや頬を膨らませた。 「栄養あるんだからいいじゃん」 「見た目の問題ってのがあるだろ!ああ、オレしばらく虫に触りたくない」 思い出すだけでもおぞましい、とばかりに兵太夫は身震いする。 「生物委員じゃなくてよかったね」 虎若の笑い声に、兵太夫は全力で頷いた。