エンプティ・レクイエム プロローグ


――夢の始まりは、偶然だった


「じゃーなー、ツナ!」

「十代目、また明日!」

「うん、また明日ね、山本、獄寺君!」

日が暮れようとしている時刻に、綱吉達は歩いていた。

何てことの無い、放課後の光景。綱吉は山本と獄寺に別れを告げ、家へ入る。

「ただいまー…あれ、誰もいないの?」

もう暗くなるというのに、電気のついていない部屋。

綱吉は電気をつけようと、スイッチを押そうとする。が、その手が不意に止まった。

「…終わりよ」

静かに告げられたその音が、辺りを飲みこむ。

薄暗い部屋の中で、その者は、ゆるやかに微笑んだ。



―夢の終わりは、たった一枚の紙切れ