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明日は、大きな任務がある。

組織一番の規模となる、それはそれは大きな任務だ。

当然、自分も参加する。

先ほど、組織の総裁が激励を言っていたが、聞いていた者が何名いることか。

そして、その意味を理解できた者がどれだけいることか。

自分も含め、そう多くはないはずだ。

まあ、だからと言って、どうこうというわけでもないのだが。

武器の手入れは終わった。

寝るにもまだ早い。

食事をする時間でもない。

日もまだある。

とすれば、行くところは一つだ。


つい数週間前ほどに来たばかりだ。

こう頻繁に来るのも、随分久しぶりな気がする。

今日も、花を添えた。

「あなたはこの花が好きだったな」

アヤメ。

花言葉は“希望”。

未来へ懸ける者へ贈る花。

俺にはとても不釣合いなその花に、少し顔を歪めた。

それから、と、もう一つ手に持っていたそれを添えた。

「これは、俺からあなたへの手向けだ」

添えた花は、アドニス。

花言葉は……。

それを思い出し、また、少し顔を歪める。

「今の俺を見たら、あなたはやはり怒るのだろうか?それとも悲しむのだろうか?」

今となっては分からない。

ただでさえ俺は多く失ってしまっているし。

でも、いや、だからこそ……。

だからこそ、戦わなくてはならないのだ。

それは、俺が決めたことだ。

きっと明日、何らかの形で決着が着くことだろう。

その結末が、たとえあなたの望んだ形ではなくても。

あなたとの、約束を果たせなくなろうとも。

「俺は、俺のために、行くよ」

深々と、石の前で礼をした。

これが、今俺が出来る精一杯だ。

「行って来ます」

それから、石に背を向けた。

出立の挨拶なんて本当はもう、意味がないかもしれない。

あなたの願いに背こうとしている俺に、そんな権利はないのかもしれない。


それでも、あの日に交わした言葉が、忘れられないから。