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ぽたぽたと、あいつの武器からは血が滴る。

それは、相当数の人数だ。

「なるほど、目撃者がいないのは、全員屠ってきたから、か……」

銃の安全装置を解除する。

鋭く純粋な殺気。

戦いは、おそらく避けられないだろう。

九代目に戦闘準備をしたまま下がっておけといい、少し近づく。

あいつも、その武器を構えた。

「今度こそ、聞かせてもらうぞ、ツナ」

「……」

答えない。

向こうが突っ込んできた。

それをかわし、手にめがけて二発。

ツナはそれを武器で弾き返し、もう片方側の刃で攻撃してきた。

高く飛んでそれを避けて、少し距離をとる。

「お前はどうしていなくなった」

「……」

やはり答えない。

代わりに、こちらへ向かってきて、大きく武器を振った。

また飛んで、蹴りを入れようと体の向きを変えたが、それも避けられていた。

直撃していたら、窓から外にたたき出されていた。

本気か?

上等だ。

「八年前、お前は何を見た?」

「……」

やはり答えないか。

どう攻めたらツナから話を聞けるだろうか?

そう思っていると、ツナが僅かに口を開いた。

「全て、手遅れだと……俺はお前に言ったはずだ」

殺気が、少し揺らいだ気がした。

砂漠の陽炎のように、揺らめいている気がする。

「お前は、家光に言ったようにボンゴレを恨んでいるわけじゃないな?」

その考えに確信を持った。

やはり、おかしいのだ。

殺気が純粋すぎる。

感情が、こもっていない。

ただ、殺気を出しているだけ。

そして、今、少し揺らいだ。

多分、そこには感情がある。

まだ、こいつは“人間”だ。

一つ確認できたことに、少し口を歪める。

「お前は、何のために戦っている?」

「……」

また返事は返って来ない。

だが、また少し揺らいだのは確実だ。

このまま言葉攻めの方があいつにはいいかもしれない。

口を開けようとして、鋭い声がそれを遮った。

「四十四!何をしている!」

びく、とツナが反応する。

ツナが出てきたところに、また違う男が立っていた。

同じように、白い面と、黒いコートを纏っている。

仲間か?

いや、それにしてはツナの反応が少しおかしい。

「俺は“アルコバレーノを殺せ”と命じたはずだ!何をモタモタしている?」

上司の立場か?

「……分かっています」

苦々しげにツナが頷く。

そして男はにやりと顔をゆがめた。

「それとも、“また”、“失くす”気か?」

「やめろ!」

そいつが言った言葉に、ツナは過剰に反応した。

何の話だ?

また?

失くす?

……何を?

「……戦います。ですから、それだけは……」

「五分待とう。その後も五分毎に」

その言葉が終わった瞬間に、ツナは飛び込んできた。

けど、さっきまでの淡々とした攻撃じゃない。

確実に焦りや、動揺が見える。

きっかけは、あいつの言葉。

ツナは、何かを失うことを恐れている?

何を?

分からない。

でも。

「てめえか……!」

ツナの攻撃を避ける。

少なくとも、ツナは戦うことを少し躊躇い始めていた。

ということは、ツナが戦う理由は、あの男にある。

何かを盾に取られて、戦わされている。

“それ”が何かはまだ分からないけれど。

少し遠いその男を、睨みつける。

甘かったが、優しい奴だった。

優柔不断に見えて、どこか意志の強い奴だった。

将来が楽しみだった。

大切な、教え子だった。

その子が、したくもない大量殺人で手を汚させられているというのなら。

俺が奴を殺すのに、それ以上の理由は必要ない。

殺気を銃にみなぎらせる。

ツナが追撃を加えてきた。

それを避け、横に飛んだ時点で銃を構える。

後ろのあいつに向かって。

引き金を、思い切り引いた。

「っやめろ!」

耳慣れた声が届く。

一発の銃声が、響く。

銃弾は、貫いていた。


ツナを。